「では定例会を始めよう」

「いくつかの議題があるが、最初に片付けるべきものは…ヒルダ」

「はいよ」

「お前の麻薬栽培施設が何者かの手によって襲われたという話だが？」
「そうだねぇ。襲われたねぇ～。生産施設にしていた村が。とんだ出費だよ。今後黒粉の流通を絞ることになるかもね」
「相手の情報は何もないのか？」
「無いね。完璧だよ。だからこそ想像できなくもないけどね」

「ふむ…」

「おい、俺たちを雇わないか？」

「お前の集めている雑魚ではロクに守れまい」

「いらないよ。あんた達にうちの重要拠点を知られるわけにはいかないしね」

「じゃあその話、私が代わりに受けたいわぁ～」
「なんだコッコドール？落ち目のお前に払えるのか？」

「大丈夫よぉ。黄金の姫のおかげで奴隷売買が法律で禁止になっちゃったけどー。蓄えはちゃんとあるもの」

「ほう。それほどの厄介事ということか。よかろう」

「すまないわねぇ～。処分する予定だった女に問題が生じちゃったのぉ。多少の戦力を用意することになるとは思うんだけど、あそこのお店を潰されるとこまっちゃうのよ～」

「大船に乗った気持ちでいるといい」

「俺たち六腕がお前の財産の安全を保証しよう」

「天から降り注ぐ雨を浴びる植物のように、己の元に救いが来ることを祈るだけの者を助ける気はしません」

「ですが己で生きようと足掻くものであれば恐怖を忘れておやすみなさい」

「あなたはこの私の庇護下に入ります」

「嘘だ！何も言ってねぇじゃねえか！」

「嘘、ですか」

「あなたはこの私があなたごときに嘘をついたと言いたいのですか？」
「あ、いや…」

「では彼女は連れて行きます」

「ま、待て！」

「まだ何か？」
「違ぇよ！そいつを連れて行かれると厄介なことになるんだ！」

「なぁ、なぁ、あんたなら知ってんだろ！？八本指を！」

「この王国を裏で牛耳ってる！だからなぁ！頼むから何も見なかったことにしてくれ！」

「彼女は連れて行きます」
「勘弁してくれ！！俺が殺されちまう！！」

《誰かが困っていたら助けるのは当たり前！！》

「銀貨！？こいつぁ…」

「その金で冒険者でも雇いなさい。それだけあれば十分、国外まで逃げられるでしょう。貴方が全力で逃げれば多少の時間稼ぎにはなるはず」

「どうでしたか？」

「梅毒に、あと2種類の性病…。肋骨の数本および指にヒビ。右腕と左足の腱は切断されています」

「前歯の上下は抜かれています。裂肛もありました。何らかの薬物中毒になっている可能性があります。他にも打ち身や裂傷など多数。それから…」

「治りますか？」

「容易く」
「ではお願いします」

「ペストーニャ様をお呼びして治癒の魔法を行使していただいた方がよろしいのでは？」
「ソリュシャン、あなたは治癒系のスクロールを所持していますね？それを使用してください」

「セバス様、スクロールは至高の御方々が私たちに与えてくださったもの。それを人間ごときに使うべきではないと愚考します」

「やりなさい」

「…かしこまりました。あれを無傷の状態…」

「そう、あのような行為が行われる前の肉体の状態に戻す…という事でよろしいですか？」

「では治療が終わったらお湯を沸かして、彼女の体を拭いてもらえますか？私は食事を買ってきます」

「セバス様、精神の傷も癒すのであればアインズ様をお呼びするのが一番かと思いますが」

「アインズ様に来て頂くほどのことは、ありません」

（知覚不能な神速の意）

（全てを認識し知覚する領域。この2つの武技を合わせしは）

「秘剣・虎落笛（もがりぶえ）！！」

ガキィィンッ

「ば、化物…！」

「ふぁ～あ」

「疲れちゃいんしたかえ？」

「それにしてもこの爪切は切れ味が悪いでありんすねぇ」

「ハハ…アハハハハハハ……」

「うわあああああああああああああああ！！！！！」

「ここは…」

「完全に癒えたとは思いますが、体の状態はどうですか？お腹が減っていませんか？」

「食事を持ってきましたよ」

「どうぞ」

「ここにいれば何も危ないことはありません。この私が保証します。目を覚ましてもこのベッドの上にいますよ」
「ありが…とうござ…います……」

「お気にされずに。私が拾い上げたからにはあなたの身の安全はできる限り保証しましょう」

「もう大丈夫です」

「うわああああああ――っ」

「もう大丈夫です」

「ごめんっ…なさいっ……」

「気にしないでください、女性に胸を貸したというのは男にとって名誉なことですよ」

「こんな…綺麗な物…」

「さ、どうぞ」

「使われないハンカチはかわいそうなものです。特に、涙を拭うことすらできないハンカチはね」

「さ、ゆっくりと休んでください。起きたら今後についていろいろ相談しましょう」