「キノ」

「何？」
「地面揺れてるでしょ？」
「地面？」

「地震…かな？」
「違う。揺れは小さいけどだんだんと大きくなっているし」
「じゃあ」

「簡単。何かがゆっくりと近づいてきているんだよ」

「何かって…」
「キノ！」

「あ…」

「あれは…何…？」
「やっぱり国じゃない？」

「旅人さんですか？あなたは入国を希望されますか？」

「そうです！」
「ではしばらくお待ちを」

「こんにちは旅人さん。私はこの国の入国審査官。兼案内人、兼警察官、兼そのほかです。我が国では公務員が色々な仕事を兼任しますので」

「こんにちは。あの…やはりこれは国なんですか？人が住んでいるんですか？」
「ええ、もちろんそうですよ」

「どちらへ向かっているんでしょう」
「今は平地に沿って西へ」

「旅人さんの入国目的は観光ですか？それとも移住でしょうか？」
「あっ、観光と休養を希望します」

「お客様はいつでも大歓迎です。何日ほど滞在を希望されますか？」
「5日から10日を希望します」

「ありがとう！また来てねー！さようならー！ばいば～い！」

「うまく行ったねキノ」
「まぁね」

「面白い国だったね。それに迷惑な国でもあった」
「どっちが？」
「両方かな」
「やっぱり」

「だってあの通せんぼな国はわざと平原を封鎖して通行する人から金品をふんだくろうとしていたんだし」
「高すぎたんだよ」
「城壁が？通行料が？」
「両方かな」
「もし森の人じゃなければ、他のものか例えば労力だったら素直に応じていたかもしれないのに」

「あの国は…これからどこへ行くんだろうな」
「さぁね。でもこれだけは分かる」
「なに？」
「数百日後にはキノがライフル構えているところが壁画になるよ」

「それはちょっと恥ずかしいかな…」
「迷惑？」

「それほどでは…ないかな」

「小型ミサイルで城壁側部が撃たれているようです」
「放っておいても問題ないでしょう」
「それが壁画のところらしく教育委員会から対処要請が来ています」

「わざとですね。なんともひどい嫌がらせです。子供たちがとても悲しみます」

「レーザーで攻撃しますか？」
「…あれは？」
「ミサイルを誘導する発射装置です」

「それだけを撃てませんか？」
「無理だと思います。レーザーの威力では兵たちも巻き込むでしょう」
「必要以上の犠牲者は出したくありません。子供たちには後で私から説明しましょう」

「パースエイダーで撃つのは?」
「そんなことができる人は我が国にはいません」
「もしよければ、僕にやらせてください」

「開けてください」
「お気をつけて」

「うわぁっ！！」

「！！」

「困った人たちだなぁ。…ん？」

「大統領閣下、畑のところが通れそうですね。家を大量に押しつぶさなくても良さそうです」
「それはとてもいいですね」

「それでは私たちはあなた方の国の田園地帯を通り抜けます。進路上の方々は退避願います。速度を上げますので半日もかからないと思います。ご安心ください」

「そんなことはさせない！たとえ大砲が通用せずとも頑丈な城壁が我々を守るだろう！！」

「い…一体何をした？」

「わー」
「高出力のレーザーだよ。森の人のレーザーサイトのお化け」
「道ができました」
「では、通りましょう」