「どうしたの？」
「いや～、筆箱が開かなくって。落としたとき歪んじゃったのかなぁ？」

「ちょっと西片、開けてくんない？」

パカっ

「なんだ、簡単に開く…」

びょい～～～ん

「うぎゃあああああっ！！！！」

「なんだ西片ぁ！？」

「す、すいません！何でもありません…」
「ふふふふっ」
「！」

「はははははっあははははははっ」

「西片って本当、いい反応するよね」

「うっうるさいなぁ！」

「ふふっ、あははははっ」

（……誰もいない)

（おかしいな、見間違いだったのか？)

（いや、感じるぞ！高木さんの気配を！）

（どこかに隠れているな…危ない。一瞬とは言え油断して鼻歌を歌うところだった。どこだ…どこにいる！？）

「！！」

（甘い！甘いよ高木さん！隙間から上履きが丸見えだよ…）

（黒板を拭こうと思った瞬間に驚かせる気だろう！？けどそうはいかないよ）

「あーあ。日直の仕事、めんどくさいからやらないでおこー。黒板とか拭かなくてもバレないしー」

（どうだい高木さん！企みが失敗してきっと悔しがっているんだろうね）

（あぁ～見たいなぁ～。高木さんの悔しがってる顔～）

（…いや待てよ？あの高木さんが上履き丸見えなんてそんなミスするだろうか？）

（いやしない！！つまりあれはフェイク！）

（危ないところだった…さすが高木さんだ！）

（さて…どこにいるんだ？高木さんのことだ。居ないなんてことはないはず）

（廊下にはいないようだな。となると残りは）

「あー、トイレでも行ってくるかー！」

（驚かせてやる…）

「ここだあああああ！！」

「い、居ない！？」

「…」

（俺は一体、何をやっていたんだろうな）

「うわあっ！！」

「うわああああああああ！！？？？」

ガターンッ！！
「あっはは、大丈夫？」

「カーテンの裏に！？」

「分かんなかったでしょ？このカーテン、ちょっと透けるから全部見えてたんだよ！」

（チクショー！嬉しそうな顔してんなぁ！)

「あー面白かった！西片の行動思い出しただけで」

「早起きした甲斐があったよ」
「このためだけに！？」

「そっ」

（何かないものか…高木さんを辱める方法が…)

「！」

（そうだ！今のうちに高木さんの消しゴムにだれかの名前を書いといて、トイレから帰ってきたらからかってやろう！）

（もう書いてある！！？？）

（み、見たらまずいかな…？一文字くらいなら…）

（”ろ”！！？？ろってことは…）

（俺の名前じゃないな………）

（別に、全然ショックとかじゃねぇし…）

（くっ！！くそぅ…！み、み、見てやる！！）

（こうなりゃ全部！！）

「へぇっ！？」

「え…」

（や、やられたあああああ！！）

（くそぅ…高木さんめ…)
「ね、西片」

「なんか、静かな教室で二人っきりだとさ、世界に二人しかいない感じしない？」

「このまま、誰も来なきゃいいのにね」

「あ、あの、高木さん…」

「高木さんって…もしかして…………れの…事…」

「おっはよー！」

「いい天気だね！」
「もう、ミナはなんでそんな朝からテンション高いのよ」
「えぇ！？普通だよ普通！」

「疲れる…」
「ダメ早苗ちゃん！疲れたって言うと幸運が逃げちゃうんだよ！？テレビで言ってたし！」
「そんなもん信じてんの？んなわけないでしょ」
「本当だよ！！元気な方がいいんだから！！」

「ウザイ」
「いたた」
「やめなって」

「…なんだっけ西片？」
「っ！！」

「な、なんでも…ない」

「ふーん」

「そういえば西片、日直の仕事は？」
「うわああああああ！！忘れてた！」

「うわあああっ！？？」
ガターンッ！

「ふふっ」

「ふふふっ。西片、本当いい顔するよね」

「しかも思い通りの行動するし」

「そんなだからつい、からかっちゃう」

「今に見てろよ高木さん！いつか絶対からかって恥ずかしがらせてやる！」

「期待してるわ」

「はぁ！？無理だと思ってるだろ！」
「まぁね」
「本当だぞ！覚悟してろよ」

「無理だと思うよ？2分の1で大チャンスを外すようじゃね」

「は？2分の1…？なに？」
「教えなーい」