「戻ってくるとはなぁ。また…」

「俺もだよ。あの時の俺は貴方達を許せなかった。だから村を出た」

「あの…何があったのですか？」

「テオのお父さんはロッシー二家の略奪から逃れるために秘密の穀物倉庫を作ったの」

「村の食料が足りなくなるとそこからこっそり配ってたんだけど…村の誰かが密告した。大勢でやってきたあいつらにお父さんは差し出されて」

「見せしめに殺された」

「その事はもういい。親父だって覚悟していたはずだ」

「テオ…お前は立派だよ。お前の父親もそうだった…」

「俺は思ったままに行動しているだけだ」

「貴方達も本当の願いが何か考えてみればいい！！ロッシー二家に怯えて暮らし続けることなのか！？それともそんな暮らしを終わらせることなのか！？」

「…」

「俺の話はこれだけだ」

「ヤーナ。お前は本当に美しい」

「そぉう？」
「あいつ！！」

ガシャンッ

「お前たちは！！」

「誰だ？」
「前にちょっとね…」

「私、あいつらにひどい目に遭わされたのよぉ～」
「お前の敵だというのなら見逃すわけには行かないな」

「俺はサルヴァドル・ロッシー二」

「お前らの名前を聞いてやろう」

「俺は…テオ・コルネーロ」
「なに？そうか…貴様が。聞いているぞ。このシスティナで我らロッシー二家に歯向かおうという命知らずがいると」

「ロッシー二…俺はお前たちを滅ぼし、この島の人々を解放してみせる！！」

「やれるものか！この島は未来永劫我らのものだ！」

「ロッシー二家の何おいて命じる。血の忠誠を果たせ！」

「ここは逃げるよ」
「なんでよ！？」

「オベルタのフラッグに集うものは冷酷非情となり、どんな残虐な事も罪の意識なくやれる」

「だったら皆殺しにすれば…」
「町の住民を巻き込みたくないんだよ」

「閃光よ！」

「くそっ！」

「テオは立派になったね」
「そうでもないさ」

「ねぇ覚えてる？テオが村を出ていった日のこと」
「うん…」
「あれから君主になるなんてすごいよ！ううん、テオは他の男の子達と違うって昔から分かってた！」

「テオならきっとご領主様を倒せる！私は信じてるから！」
「ロッシーニのやつらは君に何て言ったんだ？」

「な、なんのこと…？」
「正直に言ってくれ」

「気づいてたんだ…」
「ああ」
「じゃあなんで来たのよ！？」
「俺が逃げたら村がどうなるか分からないだろ。君が脅されているかもしれないしね」
「村のためだって言うの？」

「脅されてなんてない！その逆よ…アンタを誘い出せば街へ連れて行ってくれるって約束してもらったの！ロッシーニ家にね！！」

「それは君が望んだこと？」
「そうよ。ここで暮らしているよりマシだもの」
「レベッカ、本当のことを聞かせてくれ」
「何よ！もうアンタには関係ないでしょ！？村を捨てたくせに！！」

「――すまない」

「あの時俺は、村の人達が許せなかった。父さんが死んだのは、みんなのせいだと思ったから。でも今は違う！本当に憎むべきはそういう統治を行っているロッシーニ家なんだ。領民みんなが立ち上がればロッシー二家を倒せる！そのことを訴えるために俺は帰ってきたんだ！」
「無理に決まってる！この島ではロッシー二家に逆らっては生きていけないのよ！」
「それは違う！」
「違わないわ！！」

「それに…テオはあいつらに殺される」

「そうかもしれない。でも」

「レベッカ。戻って村から逃げるようみんなに伝えてくれ」
「え…？」
「たとえ俺を差し出してもこの村は見せしめにされるだろう」
「そんなこと…」

「どこに行くの！？」
「父さんの墓で奴らが待ってるんだろ？」

「あの時俺は村から逃げた。でも今度は逃げない」
「一人でどうしようって言うの！？たくさんの兵隊がいるのよ！！」

「！」

「うおおおおおおおおおおおおお」

「うおおおおおおおおお」

「な、何だ奴らは！？」

「テオ様、みなさんが立ち上がってくれました！」

「レベッカ…！」

「まさか…！この島の住民がロッシーニ家に逆らうわけがない！」

「みんな…ありがとう…！」

「始めよう！ロッシーニ家の支配に終止符を打つ戦いを！！」
「おおおおおお！！」

「待て！！」

ドッ！

「くっ」

「レベッカ…！？」

「このっ！邪魔をするな！」

「レベッカ！やめろ！」

「～～～～っ！」

「このっ…」

ドスッ

「レベッカ！！！」

「離れろッ！！」

ドサッ

「サルヴァドル・ロッシーニィィィ！！」

「さ、サルヴァドル様…！」

「撤退だ！」

「撤退！撤退―――！」

「レベッカ」

「テオ…ごめん…」

「テオ様」

「彼女は体を張ってサルヴァドルを止めてくれたんだ…」

「この戦いでサルヴァドルロッシーニ・を取り逃すことは負けに等しいことでした」

「レベッカ…君には幸せになって欲しかったよ…」