「アインズ・ウール・ゴウンなる人物について調査しました。彼が実在する人物であれば私と同等、あるいはそれ以上の魔法を行使する者かと…」

「なるほどな。だから嬉しそうなのか？爺」

「当然です。魔法の深淵を覗こうとするには様々な知者が必要！出来れば直接会いたいものですが…」

「あと、漆黒のモモンというアダマンタイト級冒険者について情報を集めたい」

「協力してくれるか？爺」

「もちろんですとも陛下」

「やはりエランテルに帰ってしまわれるのか」

「同行したいのは山々なんだが…」

「気にするな」

「今回は非常にお世話になりました。国王陛下もあなたに直接お礼を申し上げたかったそうですが…」
「構いませんよレイブン侯。色々と感謝します」
「いいえ。今後も良いお付き合いができるよう願っております」

「青のバラの皆さんも、同じアダマンタイト級冒険者としてまた何かの時はよろしくお願いします」
「こちらこそ」

「では」

「フラれたな」

「違うさ…」

「彼はそういう男なんだよ」

「この部屋は安全なのだな？」
「大丈夫でございます」

「ここでの会話を盗み聞きできるものなどおりません」

「そうか。では計画の全てを話してもらおう」

「まずはアインズ様と直接お会いして申し上げたいという、私の我儘を聞いて下さり、ありがとうございます」
「うむ」

「今回の一連の計画には4つほどの利点がありました」

（4つ！？？ひとつも分かんないんだけど！）

「ほう…3つだと思っていたが」

「初めてアインズ様に知恵比べで勝てた気がします！」
「お前はいつでも私に勝っているぞ」
「何を仰います、ご謙遜を！」
「いや本当に」

「さて、ではその4つについて聞かせてもらおう」
「はっ。まず第一は、この倉庫区にある全ての財を頂きます」
「うむ」

（素晴らしい！これでしばらくは金策で苦労しなくて済むぞ！）

「第二は、アインズ様に指示された八本指への襲撃を誤魔化す為です」
「そういえばアイテムを回収するのが目的と言っていたな」
「これをご覧下さい」

「この宝石の中に付与している魔法は第十異界魔法・アーマゲドンイビルです」
「悪魔を大量に召喚する魔法か」

「これはウルベルト様がお作りになったアイテムですが、ここで使うべきでしょう」
「うむ…」

「デミウルゴスよ、こちらを使うと良い。同じくウルベルトさんが作られたアイテムだ。試作品だが用は足りるだろう」

「あ、アインズ様のお手持ちのものを使うなど！」

「そうか？ならばこれはデミウルゴスにやろう。しかしウルベルトさんも自分の失敗作がいつまでも残っているのは恥ずかしいかもしれんぞ」

「なんという…！」

「感謝致します！！」
「よせ、デミウルゴス。お前の忠義への礼だとでも思え」

「私たち守護者は御方々に作られた身！ならば消滅するその時まで忠義を尽くすのは当然！にも関わらず！くり返しお慈悲ある言葉をかけて下さり、尚且つこれほどの褒美を頂けるとは！！」

「このデミウルゴス、より一層の忠節を捧げさせて頂きます！」

「あ、うん…期待しているぞ！」

「それでデミウルゴス、言うべき事は別にあるだろう？」
「は！そういったわけで、ヤルダバオトはこれを狙って八本指の拠点を襲い、王都の倉庫区画を占拠したという事になります。そして勿論このアイテムは八本指の拠点である倉庫から発見されることになっております」

「それで？三つ目の利点は？」
「はい。炎の壁の内側にいる人間たちを捕まえました」

「既にその大半をナザリックに連れ去り様々な用途に使えればと考えております」

「それは老若男女関係なく、ということか？」
「はい」

（確かにこの体になってから人間という種族に親近感は無い…。ナザリックの利益のためならばいくら殺したところで心が痛むこともない。だけど、それでも…）

「デミウルゴスよ、ナザリック地下大墳墓、そしてこの私に無礼を働いていない人間には、苦痛なき死を与えよ」

「なんと慈悲深い…！承知致しました」

「話を戻そう。そうすると四つ目の利点は…」

「はい。これらすべての悪評を魔王・ヤルダバオトに受けてもらいます」
「つまり魔王としての悪評を立てることが狙いか…」

（冒険者モモンの名声を高めるのに使えるわけだな）

「成程。納得した。それで私にこれから協力して欲しいことはあるか？」
「あとは私を撃退して頂くだけで問題はありません」

「アインズ様の引き立て役になれるよう、精一杯努力したいと考えております」

「何をしている！？俺は”行け”といったんだ！」
「それは…」
「待て待て待て！何があったかは分からないがあれでは言葉が足りなすぎだ！」

「なぜ追ってこないんだ…！？」
「一体どうしたんだよ？」
「セバス様に匹敵する化物を見つけた！」
「！」

「それで！？」

「刀で…そう、俺は奴の爪を切ったんだ！」

「俺は！あいつの爪を切ったんだ！！！」

「まぁ…刀で爪を切ったんだから確かにそれはすごい…よな」
「すごい…事だと思います…！」

「とにかく、追っ手が来ないのは奇跡だ！急ぐぞ！」

「ぐはっ！！」

「モモン様ぁ！」

「少しだけ楽しいな…。なんというか、リアルというのか？戦っているという気がする」

「それはよろしゅうございました」

「では本気で参ります！」

「かかってこいヤルダバオト！！」

ヒュンッ

「ウオオオオオォォ！」

「悪魔の諸相・煉獄の衣」

「このレベルの武器を融解するとは！その力、強化されているな？」

「ご明察通りです」

「地獄の炎か！」

「はい。いかに炎に対して完全体制を有していようと、無傷というわけにはいきませんよ」

「フロストペイン改！」

「それは一体！？先ほどの槍もそうでしたが…」

「アイシーバーストォ！！」

「本当にあなたはお強い…！」

「お前もな」

「なんという二人だ…」

「提案があるのですが」

「このあたりで引きますので、勝負はこれくらいにしませんか？」

「ふざけるな！！」

「構わない」
「！？」

「モモンさんがなぜこのような頭の悪い女を連れてきたのか、検討も付きませんねぇ」

「少し考えれば分かるんじゃないですか？悪魔の群れがいつでも王都全域をお添えるよう待機させております」

「王都を人質に！？」

「ではこれで撤収させて頂きます。残念です！アイテムを回収するという目的も果たせないのは！」

「行ったな」

「わー！やったぁ勝ったぁ！流石モモン様だぁ！」
「いや、すまないが離れてくれないか？」
「照れなくても～」