「やばっ、どうしよう！仕事仲間がこっちに！」
「はぁ？」
「黙って抜けてきたから怒られちゃう…」

「あっ！？お、おい！」

「・・・・・・・・・」

オッサン「よっこいしょっと」
風太郎（そこ座るんかい！！）

（あはは…本当は友達なのに悪いことしてるみたい）
（………俺らって友達なのか？）

（え？ハグだけで友達超えちゃうのはさすがにヤバイかな～）
（そうじゃなくて！俺はただの雇われ教師だ！それさえなければお前たちと接することもなかっただろう。そんな関係を友達という言うには違和感…）
（何それめんどくさ！）
（へ！？）

（はっ！あの時、三玖も本当は傷ついていたんだろうか？）

「お前の仕事って…」
「実はあの人カメラマンなの。私はそこで働かせてもらってる」
「カメラアシスタント？」
「…うん、いい絵が取れるように試行錯誤する。それが今は何より楽しいんだ」

一花「風太郎くんは何のために勉強してるの？」

風太郎「何のため…それは―――」

オッサン「一花ちゃん！見つけた！」
風太郎「しまっ…」

「え？」
「こんなところでなにやってんの！早く来て！」
「あ、あの…！？」
「三玖！？もしかして私と間違えて！？」

「いた！あそこだ」
「電話は？」
「繋がらない…」

「お前！なんで仕事抜け出してきたんだよ！？」
「～～～言いたくないっ！どうやら風太郎くんとは友達じゃないみたいだし！」
「そうは言ったが」

風太郎（なんでそんなこと聞いてんだ俺、こいつらが何をしてようが俺には関係ない。関係ないんだ！）
オッサン『一花ちゃんとどういう関係！？』
三玖『何でもない』
五月『私に聞かずとも、あなたは既に答えを持っているじゃないですか』

「あの、私っ、一花じゃ…。！」

「君はさっきの！？何だ君はァ！君はこの子の何なんだァ！」
「俺は――（この関係を友達とは言えないが、あの時、咄嗟に出た言葉が一番しっくりくる）」

「俺はこいつの、こいつらのパートナーだ。返してもらいたい」

「よく見てくれ！こいつは一花じゃない！」
「その顔は見間違えようがない！うちの大切な若手女優から手を離しなさい！」

「一花ちゃんがふたり―――！？」
「一花が女優って…」
「五つ子って…」
「「マジ！？」」

「人違いをしてしまったのは本当にすまなかったね。でも一花ちゃんはこれから大事なオーディションがあるんだ」
「そんな…！一花！花火はいいのかよ！？」
「…みんなに宜しくね！」

「急ごう」
「一花！」
「風太郎、一花をお願い」
「三玖。だがお前を一人にするわけには」

「私はもう大丈夫だから」

？？？「どうやらお困りのようですね！」
？？？「ですね！」
風太郎「おっ、お前は…！」

「一花！」
「風太郎君？」
「ヒゲのおっさんは」
「車取りに行ってるとこ」

「風太郎くん…もう一度聞くね？なんでただの家庭教師の君がそこまでお節介焼いてくれるの？」
「俺とお前が効力関係にあるパートナーだからだ」

「半年前に社長にスカウトされて、それからちょくちょく名前のない役をやらせてもらってた。結構大きな代役のオーディションがあるって聞いたのがついさっき。いよいよ本格的にデビューかもってとこ」
「それがお前のやりたいことか」
「そっ。せっかくだから練習相手になってよ」

「”ソ、卒業オメデトウ”」
「”先生、今までありがとう。あの教師で先生に出会って、初めて私は…。先生、あなたが先生で良かった。あなたの生徒で良かった…！”」
「っ…！！」
「あれっ？もしかして私の演技力にジンときちゃった！？」
「あなたが先生で良かったなんて…お前の口から聞けるとは！」
「そっちか」

「あ、社長の車だ。じゃあ行くね。とりあえず役、勝ち取ってくるよ」
「おい」
「？」

「へぇっ・・・？」

「おい。その作り笑いをやめろ」
「あっはは…え？」
「お前はいつだってそうだ。路地裏にいた時も、そのまま行こうとした時も。大事なところで笑って本心を隠す。ムカっとくるぜ」

「俺の家には借金がある。その借金を返すために家庭教師をやってる。だがお前たち五人には手を焼きっぱなしだ。結局、何の成果も上げられないまま給料もらっちまった。せめてもらった分の義務は果たしたい。以上」

「この仕事を始めて、やっと長女として胸を張れるようになると思ったの。一人前になるまではあの子達に言わないって決めてたから。急にオーディションがあること言えなくて…花火の約束あるのに黙ってきちゃった。これでオーディション落ちたらみんなに合わす顔がないよ」

「まぁ…あいつらに謝るときは手伝ってやるよ。パートナーだからな」

「お疲れ様でした。本日のオーディションは以上です。結果は後日…ん？」
「遅れてすみません！中野一花です！」

「じゃあ準備はいいですか？」
「よろしくお願いします」

「”卒業おめでとう”」
「”先生…今までありがとう”」
「！」

（上手く笑えてるかな…？あぁ、こんな時みんなはどうやって笑うんだろう。四葉なら、三玖なら、五月なら、二乃なら…）

「あなたが先生で良かった。あなたの生徒で良かった…！」

「完全に目を開けたまま寝てる。怖」

「ハッ！！オーディションは終わったのか？おかげさまで」
「いやぁ、一花ちゃんにあんな表情がだせるとは！それを引き出したのはおそらく君だ！私も個人的に君に興味が沸いてきたよ！ﾁｭｯ♡」

「どこに向かってるの？」
「近くの公園だ。あいつらが待ってる」
「みんな怒ってるよね…花火大会見れなかったこと…」
「そうだな。だが諦めるにはまだ早いんじゃないか？」

「あっ！一花に上杉さ～ん！お帰りなさい！」
「打ち上げ花火に比べると随分見劣りするがな」
「準備万端です！我慢できずに花火おっ始めちゃいました！」
「お前が花火を買ってたおかげだ。助かったよ。それにらいはの面倒も」
「いえ、どちらかというと私が面倒見られてたような～」

二乃「あんたにひとこと言わなきゃ気が済まないわ！」
風太郎「っ…」
二乃「お・つ・か・れ！！」
風太郎「紛らわしい」

「みんな、ごめん…！私の勝手でこんなことになっちゃって、本当にごめんね…」
「そんなに謝らなくても」
「まぁ、反省してるんだし」
「全くよ！なんで連絡くれなかったのよ！？今回の原因の一端はあんたにあるわ！」

「…あと、目的地を伝え忘れた私も悪い」
「私は、自分の方今音痴に嫌気がさしました」
「私も。今回は失敗ばかり…」
「私も屋台ばっかり見てしまったので」

「お母さんがよく言ってましたね。だれかの失敗は5人で乗り越えること。だれかの幸せは5人で分かち合うこと」
「喜びも悲しみも怒りも慈しみも」
「私たち、全員で五等分ですから」

（しょぼい花火…もう少しだけ見ておくか）

「残り五本」
「じゃあ好きなのを選びましょう」
「「せーのっ！」」

「あっ、珍しいね。同じの選ぶなんて。私はこっちでいいよ。それは譲れないんでしょう？」
「…」

「三玖ーっ！線香花火より派手な方が面白いよ！」
「私はこれがいい」
「へー…そんなに好きなんだ？」
「うん…好き」

「まだお礼言ってなかったね。応援してもらったぶん、私も君に協力しなきゃ。パートナーだもんね」

一花「私は一筋縄じゃいかないから覚悟しててよね」
風太郎「・・・・・・・・・・」
一花「もう…」

「頑張ったね…ありがとう」

「今日は、お休み」