「母さんは？」
「え？」
「母さん的には誰を行かせたいの？」
「えっ、えーっと、だからそれがね…」
「強いて言うなら？」
「強いて言うなら…えー…うーん…」

「こ、これか…」

「これかな…」

「そうなんだ！一松とトド松！」
「しっ！声がでかい！」
「なんでなんで！？」

「なんか親に対しての愛情が薄そうっていうかー…」
「ほー」
「残しておくメリットが無いというか…」
「なるほど」

「あれっ！今酷いこと言ってる！？」
「言ってるね。ていうか今日はずっと酷いよね？でもいいんだよ。今はぶっちゃける場なんだから」

「ちなみにこれは？」

「「いやいやいや！ないないない！こいつを人様の所に預けるのはさすがに気が引ける！！」」

「だよねー！」
「そうよねー！」
「残したいっていうか残さざるを得ないんだよね！」
「そうなの！」

「はーい、じゃあ面接始めます。はいこんばんは、一松店長です。よろしくね」

「い、一松店長、よろしくお願いします！」

「うん、緊張してるの？ひょっとして君はこういう店で働くの初めてかな？」
「は、はい」

「あははは。大丈夫、最初はキツいこと多いかもしれないけどすぐになれるからね」
「本当ですか！？」
「うん。じゃあさっそく衣装に着替えようか」

「はい！トティ美、頑張りますっ！」

「はい」
「無理ですぅ！こんなの着れません！」

「じゃあこれは？」
「無理ぃ！嫌だぁ！」

「じゃあこれ」
「無理ぃ！ていうかどういうコンセプトなんですか！？こんなんで本当にお客さん喜ぶんですか！？」
「うん。まぁ世の中にはいろんな人がいるからね」
「そ、そうだけど…」

「ちなみにうちの店でやってるサービス内容はこんな感じだから」

「一発ギャグ、大喜利、モノマネ、箱の中身はなんでしょう？、バンジージャンプ、野生のワニとキッスをする」

「無理ですぅ！一個も出来ません！」
「そのうち慣れるから」
「慣れません！思ってたのと全然違う！」

「無理ぃ！出来ません！」

「無理ィィ～～！」

「む、無理ぃ！ン”ア”ァ”ッ！」

「一松店長…私にはやっぱりこういう仕事は無理みたいです」

「最初はみんなそう言うんだよ。でも大丈夫。慣れるから」

「――そっか、なるほどね～。だから矯正施設なんだ。母さんにそんな並々ならぬ決意があったとは」
「苦肉の策よ」
「分かった！僕も心を鬼にして協力するよ！」

「で？この中から誰とさよならするかを選べばいいんだよね」
「そう。どれも酷すぎてお母さんサイドでは差がつけられないの。六つ子サイドの意見を聞かせて頂戴？」

「まぁ六つ子サイド的に言うと」

「コイツしかいない！」

「まぁ！こんなに結論が出るのが早いとは！」
「即答だよこんなの！」

「えぇ~でもおそ松って何ていうの、あなたたち六つ子の象徴的な存在じゃない？コレが居なくなったらなんか訳分かんないでしょ？」
「いやいや！六つ子サイドからするとこいつが居なくなるのが一番平和！他の奴らに”せーの”で聞いてみ？一斉にこいつを指さすと思うよ」
「そうなんだぁ」
「そうなの」

「母さんはてっきり…」

「この辺を選ぶんだと思ってたわ」
「あー、うーん。まぁね」

「だっていつもみんなガミガミ怒ってるじゃない？うざいんでしょ？」
「まぁウザいんだけどー、無害ではあるんだよね」

「だから六つ子サイド的には別に残しても問題なし！」
「あっそう…。じゃあ残すか」

「で、どうすんの？結局誰とサヨナラすんの？」
「え？うーん…」

「じゃあ」
「うお！マジで！？」
「六つ子サイドの意見を採用する。あと確かにこの子が居なくなったら貴方達に大きな変化が生まれそうね」

「決定！」
「うん」

「さよならするのはおそ松！」
「おそ松！」

「分かった。じゃあ呼んでくるよ」
「待って！」

「うあぁぁ～～どっしようかなぁ～～」
「な、何を！？」

「おそ松かぁ～！おそ松ねぇ～！」
「いやどういう状態になってんのそれ！？」

「やっぱりおそ松は止めとく！」
「はぁ！？止めんの！？」
「うん」

「あぁそう。じゃあ誰にするの？」
「えっ…う～んと…」

「これ」
「カラ松？」
「うん」

「決定」
「決定！」

「分かった。じゃあ呼んでくるね」
「待って！」

「ウアアアアアアアアアア～～～ッ！！！」
「母さん！？だからどういう状態になってんのそれは！？」

「嫌になってきた！！」
「はぁ！？」

「私が言い出したことだけどいざ一人選んでサヨナラするとなると嫌になってきたぁ！！！」

「母さん！！！」

「ちょっと落ち着いて！そもそもこれは母さんが言い出したことなんだよ！？」
「そ、そうだった！そもそも全て、私が言い出したことだった！また甘さが出るところだった！ありがとうチョロ松くん」
「いえいえ」

「じゃあこれは？」

「一松やだぁ！！」

「じゃあこれは？」

「トド松ヤダヤダァ！！」

「これは！？」

「やだってばーっ！！」

「良い柄してるもん！」

「可愛いもん！！」

「良い子だもん！！」

「無理ぃ！！松代無理ぃ！松代には選べないぃ！！」

「あああああああああ～～」
「松代ォ！しっかりしろ松代ォ～！！」

「もうぶっちゃけて言うけどね？みんな毎日ダラダラしてようがニートだろうが私はどうだっていいの。私は全然気にしてないの」
「ええ！！急にどエライカミングアウト来たよ！大前提覆してきたよ！じゃあなんだったの今までの時間は！？」

「あー言っちゃった。でも本心。でもいいもん、みんな元気なら全然気にならないもーん」
「いやいやだからさ！これは母さんがそもそも言い出したんだよ！？」

「そうだった！また甘さが出るところ！ちゃんと一人選ばないと！」
「この件、終わりは来るのかなー！？ねえ母さん！」

「もう！じゃあ松代はどうしたらいいのよ！？」

「あっそうだ。じゃああなたが行きなさいよ」
「えぇここで来るんだ！？なんで！？」

「じゃあ父さんに行ってもらおうか」
「はぁ！？」
「本当に施設に行かなきゃいけないのは私か！はははは！！」
「母さんおかしくなってる！落ち着いて！」

「アハハハハハハハハ！！！」
「母さ―――ん！」

「…で、結果は！？」
「誰が行くことになったの！？」
「チョロ松！」
「チョロ松兄さん！」
「なぁ！？」

「結果はね…」

「結局母さん選べず終い」

「父さん、今日会社でじっくり考えたんだ。でもやっぱり、誰かを施設に2年もやるなんて馬鹿な話だな！」

「うんうんうん！！」
「とはいえ、心を鬼にしようと」
「えっ？」

「この中から3人、明日から施設に行ってもらう！」

「ん？」
「あぇ？」
「え？」
「ん？」
「うん？」
「んん…」

「えぇぇ！！」
「3人！？」
「なんで増えてんの！？」
「だって家庭のテコ入れはこれくらいの思い切りが必要だろ？」
「テコ入れ！？いやそのテコ入れいらないぞダディ！」

「さ～て～と～。だ～れ～に～し～よ～う～か～な～」

「ととと父さんこれあげるから！」
「え？」
「キャバクラの割引券！」

「えっ！いいの！？」

「おそ松100ポイント！」
「よっしゃぁ！」

「父さん！？プロ野球のチケットあげる！」

「十四松、50ポインツ！」
「イエイッ！」

「父さん、アイドルの写真集あげる！」

「100ポイント！」
「ッシャー！！」

「ダディ使ってくれ！」

「ワンモア？ワンモア？？ワンモア？？？」
「カラ松施設免除！！」

「ハッハー！」

「父さん、無料エロ動画サイトのアドレス」

「100万ポインツ！施設免除！」
「アザッス！」

「父さんごめん」
「え？」

「僕は皆みたいに何かをあげることはできない…でもね」

「僕は父さんの背中を見て育ったから立派な男になれる！いつもありがとっ」

「ワーオ！」

「一億ポインツ！！ニート一生許可！」
「っしゃあ！トッティ舐めんなよオラァ！」

「よしお前らァ！日頃の感謝を込めて父さんを胴上げだ！」
「おう！」

「わーっしょい！わーっしょい！わーっしょい！」
「苦しゅうない！苦しゅうないぞニートたち！私は本当に幸せ…」
「ははは…あははははっ」

「あ～あ。本当におかしな家ねぇっ、嫌になっちゃう！」

「ていうかいつになったら働くんだよー！もーっ、この馬鹿ニート達～～っ！」

「うわぁ！！」
「痛いなぁ！何してるの母さん！？」
「ちょっと母さん」
「なにやってんの！」
「どうだ！参ったかー！」

「いや早くどいて…」
「おいマミィ！」

「だめ。もう少しこのまま」

「えぇなんでだよぉ！」
「母さん！！」
「だめ♡」
「早くどいてよぉ！」
「だーめー♡」