「お待たせ」

「家の用事は済んだの？」

「そっちは受験勉強サボり？」

「いやいや、合格祈願も大事でしょ」
「どうしたの？」
「いや…」
「美奈さんも初詣行くの？」

「お姉ちゃん！」
「瑛太くん、久しぶり！」
「どうも」

「私の時は気付かなかったのになんでお姉ちゃんには気づくの？」
「美奈さんはあんま変わってないし」

「そこは綺麗になったって言ってくれないとー」
「じゃあ、綺麗になりました」

「美緒も可愛くなったでしょ？」

「もう！おねえちゃんはわさび買いに来たんでしょ？」
「ああそうだった！」

「じゃあ、美緒のことよろしくね」

「……」
「私にはお世辞言わないんだ。ふ～ん」

「はい」
「？」

「猫のお礼」

「泉先輩って、どう思ってるの？」
「は？」
「相馬先輩のこと」
「どうって…中学の頃からの友達」
「それだけ？」
「一番仲良かった友達」
「ふーん」
「なんだよ」

「夏目会長は？」

「中学の時、クラスが一緒だった女子。てかその会長って呼び方…また生徒会やってんだ夏目」
「もう引退したけどね～。元生徒会長。中学の時も？」
「副会長とかやってた」

「さすが。よく知ってるね～」
「普通知ってるだろそのくらい」
「興味ないのに副会長とか書記とか覚えてる？私全然記憶にないけど」

「美緒先輩のどこが好き？」
「っ」

「違うから」

「これ証拠写真」

「お前っまた勝手に！！」

「美緒先輩の好きなところをひとつ言えたら消してあげるー」

「……不器用なとこ」

「ぷっ」

「あはははは！！！それ、絶対会長には言わないほうがいいよ！？」

「言うわけ無いだろ……」

「こんな時間でも人いるんだね」
「うん」
「初詣って毎年ここ来るの？」
「うん、お父さん近い所が良いって言うから」
「それうちもだ」
「有名な神社は地元だと意外と行かないよね」

「泉、相馬から？」

「ちがう」
「九州の友達とか？」
「まぁ、そんな感じ」
「なんかあやしー」

「…夏目に押し付けられた写真の女子、アイツいつもああなのか？」
「ああって？」
「なんか…パワフル」
「うん。いつもパワフル」

「ああ、二年の小宮？陸上の大会も原付で遠くの会場まで撮りに来てね～」
「いろんな意味ですごいな…」
「でも男子ってああいうの好きでしょ？」
「へぇ～～？」
「陸上部の男子にはかわいいって人気だよ」
「別になんとも思ってない」
「ムキになるところがあやしー」

「元は夏目の紹介だろ……」

「はぁぁぁ―――――」

「…なんで猫？」

「誰かが犬の代わりに連れてきた」
「犬だって聞いてなかったし！」
「言ったろ？」
「絶対言ってないし聞いてない！」
「お前ら…もうちょい俺の心配をしろよ…」

「うあああああああお前に言ったんじゃねぇぇぇ！！！」

「相馬～ごめ～ん！」

「だあああああああ」

「泉も手伝って！」
「えー」
「相馬先輩！逃げて逃げて！」

「元気出せ」

「っ」

「何？誰から？」

「やべー…俺やっぱ好きだわ」

「初詣の時、もう一度森川に告白する！」

「俺、森川のことが好きだ！」

「好きだ！！」

「付き合って欲しい！！」
ゴォォォォォォ

「ごめん」

「付き合えない」

「………そっか」

「ごめん」

「悪い」

「先…」

「帰る…」