「そなたらはもうこの宇宙で孤立無援…あ…！」

「気づいたか」

「わしらはここに召喚された時からいかなる覚悟もしておったさ」

「そしてそのための布石も既に打ってある」
「別動隊？」

「不測の事態を予測し、あらかじめ隊を二つに」

「我が海援隊の誇るステルス艦じゃ。既にこの本部に迫っておる」

「合図一つで乗り込んでくるわ」

「逆襲の時は来たぜよ、ズラ」

「ズラじゃない、囚人番号3692番だ」
「あ、すんません。かけ間違えました」

「どうした？」
「間違い通信じゃった…ズラじゃのーて3692番じゃった」
「3692番じゃない桂だ」

「っておまんも捕まっとるんかい！ちょまて！おまんいったいどこで何しちゅーがか！わしらに何かあったら頼むゆーたじゃろ！」

「案ずるな俺たちは別動隊だ。お前たちとは全く別件で捕まった」
「いや、そこが別動？」

「それより新種の生物を捕らえたと聞いたが」
「ああ、あれです」

「先刻船にはねられたところを部下共が拾ったようです」

「ジョウイヒヒ？マントヒヒの類か？うえ？」

「おい！ちゃんと掃除してるのか？糞しかないぞ姿が見当たらん」

「動物園あるあるですな。いつまで見てても動物が見当たらない、ウンコだけずっと転がってる檻」
「いやぁあるあるはいいからどこじゃジョウイヒヒ」

「動物園あるあるですな、ウンコだと思ったらとぐろを巻いたジョウヒヒヒだった」
「あれジョウイヒヒなの？ジョウイヒヒってとぐろ巻くの？」

「ふ～ん、え！ぶふ～～！」
「お、皇子～～～～！」

「気を付けた方がいい、ジョウイヒヒは周りの景色に合わせ擬態し、自らの姿を隠す」

「これをなんというか知ってるか？」

「ステルスだ」

「皇子を離せ！」

「種を守るための箱舟？ケチな事を言うなよ」

「どうせなら…星事救う巨大な箱舟を作ってみんか」

「ううう…出る…出る…」

「おぼろろろろろおお」

「…でちゃった」

「実はお前たちと分かれてから待機中不慮の事故があってな」

「皆の者いつでも突入できるように準備をしておけ」

「ぬおっ」
「どうした？」
「いや、今目の前を敵艦が横切って…」

「案ずるな、向こうからこの船は見えていない。なんせステルス艦だからな」

「ほんとに見えてないんでしょうか…なんかさっきからやたらと周りをうろついてるような」
「考えすぎだ」

「いやでも桂さん、実際ステルス艦を外から見たことあります？俺たち外からどー見えてんですか？そもそもステルスってなんですか？」

「ステルス…はあれだろ。透明になる的なあれだろ」

「待てよ、いくら透明でも俺たちはこうして見えているぞ。とうことは…」

「丸見えではないか！」

「そ、そうか…俺たちも含めて透明だということだな」

「待てよ…俺たちが透明だとしても外から摂取したものをその内容物を…」

「丸見えではないか！」

「あ、そうなの？な～るほど」

「つまり俺たちの中身がいくら見えようと船もそれに合わせてカムフラし、隠してくれる技術…」

「やはり丸見えではないか！」

「坂本め！よくもこんなポンコツに乗せてくれたものだな。
皆の者！早く自らもカムフラージュを施すのだ！明かりを消せ！気配も消せ！」

「宇宙に溶け込むのだ。無だ。ただそこにある宇宙となれ。きさまらは宇宙の一部であり宇宙そのものだ！」

「あの…桂さん…何も見えませんが」

ﾄﾞｶｰﾝ

「うおおぉお」

「というように坂本のポンコツのせいでどこぞの船に追突されてな」

「おまんの頭のポンコツのせーじゃろ」

「気づけば妙な連中に囲まれて囚われていた」

「解放軍じゃなかか」

「ああ違う。額からわいせつ物のようなものが生えた妙な連中だ」

「！」

「俺たちに向かって言ってたよ。我々はお前たちを捕らえたわけではない保護したのだと」

「この船は滅びゆく地球から命を守るための」

「ノアの箱舟じゃの」
「まさしく」

「よくぞここまで集めたのじいや」
「はい、戦争の混乱に乗じてキャトルミューティレーションしまくりです」

「どうせ滅ぶ星です。皆死にます」

「んー、むしろ感謝されてしかるべきじゃ。絶滅する所を救ったうえペットにしてやるというのだから」

「しかしもっと満遍なくさらえなかったのか？大分偏ってるのぉ」
「犬というのは実に種類の多い生物ですからなぁ」
「あ、そう」

「あ？こいつに至っては死んでおるではないか！」

「あれは負け犬にございます。驚いたことにあれでも生きているんですよ」
「誠か！」

「愛することを守ることもできず共に死ぬこともできず。ただ生きさらばえるだけの生物にございます」

「そうか～哀れな生物よの～だが案ずるな、お前を死なせはせんぞ。
死ぬ方がましだという苦しみに見舞われようと離しはせん。大切なペットだからの」