（ロードレースは半分はメンタルなスポーツだ。心が折れたら終わり。
逆に目的があれば前に進める）

（こいつ…先輩の俺を助ける為に全力で前に進もうとしているのか）

「青柳、体調はどうですか」

「さっきから言ってるが万全だ」
「ま～た無理して。俺の前では素直になってください！」

（ともかく、こいつはバカじゃない。特別なバカだ）

「おらぁあああ、呼吸を合わせてください」

「せーのっ！」

（これは…ひょっとするかもしれない）

「お前が進めないのなら」

「俺が押してやる！」

「短いプッシュはいいですけど選手以外の長いプッシュはルール違反っすよ。ペナルティが！」

「休み休み押すさ。だったら問題ないだろ」

「全力でお前たちメンバーを支えるのが俺たちサポートの役割だ！」

（古賀さん…）

（総北メイトはまだ繋がっている）

「うおおおおお」

「さーせん古賀さんあざっす！」

（ありがとうと言えるんだな鏑木）

（昔の俺なら当然だと思ってた。手嶋と青柳がサポートやってるのは努力が足りないからだと）

（そうじゃない皆が支えあってるから前に進めるんだ）

「信じろ！必ずチームに戻れると！」
「はい！」

「想像して走れ！もう一度復調する自分を！」
「はい！」

「そしてまだこの先このレースを走り成長するんだ全身で。
できるはずだ、お前が一番伸びしろがあるんだ！」

「はい！」

「想像する、想像するんだ復調する自分を！」

「遅い選手は左に寄ってください～」

「集団が通過します！」

「ぬか…されました、集団に」

「一瞬で」

（集団にまで追い抜かれた…）

（一人止まってる…）

「進め鏑木！まだいける！チームメイトが待っている！」

「つなげ！願いのたすきを！」

「ほんとだ見える、総北ジャージ！」

「進め鏑木！つなげろ、希望の糸を！」
「古賀さんあざっす！」

（どうすんだ俺…やっぱもうこれで終わりか？）
「止まるな鏑木！前へ進め！」

「ペダルに足を乗せろ、レースはまだ終わっていない！」
「古賀さん…？」

「え？え？なんでこんなところにいるんですか！」

「ワープっすか、マジックすか！」

「御託はどうでもいい！今はレースだ！ペダルに足を乗せろ！」

「進め鏑木！絶対に止まるな！」

「ロードレースは常に前に進むスポーツだ」

「立ち止まることは放棄を意味する」

「インターハイをこんなところで投げ出すとは俺が許さん！」

（やばい、本気だ。この人の言葉、全身全霊で言ってる。伝わってくる、手の先まで）

「進め！何があっても前に進め！鏑木！」

「はい！」

「鏑木、どうしてもこの集団から飛び出したいか」

「あったりまえでしょ」

「方法があるとしたら？」
「何かあるんすか？」

「俺もここで使うと思わなかった」

「これだ」

「神様の便せん」

「さすが神様、ヒントが書いてあるんすね、ひ・・・め・・・」

「歌詞だ、ある歌の」

「ひめなのだ？」