「お麗しいわねーー。」
「しばらく授業でお見掛けしなかったけど」
「えりな様お元気そうでなによりですわ」

（思い切って授業に参加してよかった。お父様は無理やり連れ戻す気はないようだし）

「えりな様、お疲れ様でした。Ａ評価獲得さすがでございます」

「造作なき事よ」

「薊おじさまが余計なことをなさらなければ私えりなともっともっともーっと仲良しになれたのに。失礼しちゃうわ」

「…」

「大体…最近辛気臭い顔しすぎよ。もっと堂々としたらどうなのえりな。大方極星寮に籠ってばかりなんでしょ」

「何よその言いぐさ。アリスが私を家出させたんじゃないの！」

「薊おじさまに怯えているえりなを見ていられなかったからでしょ」
「…！」

「薊おじさまに見せつけなきゃだめ！自分は自分なのだと。誰かの思い通りにはなりはしないと」

「いつまでも殻に閉じこもってちゃだめよいいわね？」

「アリス…」

「それに…私はいずれえりなをけちょんけちょんに打ち負かすつもりなんだから。私の引き立て役になってもらうためにもいつまでもしゅんとされてちゃ困るのよね」

「なんですって！」
「なによ！」
「まずい料理しか作れないくせに！」
「まずいって言った！」
「まずいからまずいって言ったのよ！」

ぎゃーぎゃーぎゃー

「結局すっげー仲良しだな」

「それ二人には言うなよ。面倒なことになるから」

「どちらの腕がより上なのか。」

「俺でよければ相手をしてやってもいいぜ。十傑第一席の座を賭けて」

「マジっすか」

「マジだよ。でももし俺が勝ったなら君はセントラルに入り俺の下につくんだ」

「この勝負受けるか？幸平創真」

「上等っす。やってやろうじゃないっすか。第一席との一騎打ち」

「よし、決まりだ。対決テーマだけど鹿肉はどうかな？」

「本来さっきの授業で使うはずだったみたいで様々な部位が用意されてるから」

「なるほどＯＫっす」

「あとは料理ジャンルなんだけど」

「フレンチでいきましょう」

「ほぉ…いいよ。それじゃ始めようか」

「勝負開始だ」

「えりな様、次の残党狩りが決まったそうですよ」

「三日後だとか」
「そう」

「また多数の団体がなくなってしまうのですね」

「でもアリスのように勝利をもぎ取る団体がでるかもしれないわ」

「お父様の、薙切 薊のセントラルが絶対というわけではないもの」

「何、じっと見たりして」

「いえ、えりな様の表情がどこかいつもと違う気がしまして何か心境の変化でもおありになったような」

（素材への労り方が半端じゃねぇ、どこまでも食材を慈しむようなまるで静かに話でもしているみたいだ）

「それが第一席たる所以なのよ。今彼は本当の意味で食材と対話しているの」

『よーしよし、ほらこっちだ。もっと近くへ来てごらん』

『そうだおいで。さぁオレの皿に宿っておくれ』

「すごい、肉汁がシカの中で静かに波打ってるみたい」

「あの食材の持ちうる最高の状態へ今まさに高まっている」

（はぁ…食べてもいないのに）

（香りと見た目だけで）

（くらってしまう）
（（あの素材の持つエネルギーを！））