「クサナギ、どうやらお前が斬れないのはその刃だけではないようだ。あの女は何も忘れてはいないよ。お前のことも俺のことも。ただ、知らないだけさ」
「知らない！？どういう意味やそれ！？」

「まだ気づかないのか。アレはお前の鞘でも俺の鞘でもない。アレはお前の娘、さあやだ」

「なんやて！？」

「娘って何？どうやって産むの？」

「見間違うのも無理はない。さあやは昔のあいつと瓜二つだからな。鞘子はお前と離ればなれになった時すでにお前の子を宿していた。そして一人で育て上げた。帰らぬ父と親子３人、共に暮らせることを信じて…」

「だが女手一つ、それも刀を持たぬ鞘が子を守るのは容易ではない。あいつは様々な刀の鞘になることで生き延びる道を選んだ。例えそれが夫に対する不義理だとしても。だがあの頃のあいつはもう憔悴し、疲れきっていた」

「なんで…なんでお前がそれを知っとんねん！？」
「決まってるだろ。俺がそこからアイツを助け出してやったからさ。いつまでたっても助けに来ない鈍に変わって、その苦しみから鞘子を開放してやったのさ」

「ま、まさかお前ぇ！」
「俺がこうしてここにいるのはあいつとの約束を守るため」

（私はどうなってもいい。どうか娘とあの人だけは…ひと目でいい、あの人にあの子の元気な姿を！）

（一目？俺がそんな心の狭い男に見えるのか？）

「親子3人仲良く合せてやるさ。俺の腸の中でな」

「確保ぉ！」
「おやおや、仲間に向かってなんの真似だ？」

「おいトシ！」
「今は俺を信じろ。こいつはもう総悟じゃねぇ」
「バカ騒ぎは終いだ。テメーの正体は割れてる。その剣を捨てろ」

「ふふふ…真剣勝負の最中に何を世迷言を…そんな真似したら、俺が斬られてしまうよ？」

「従わねぇなら俺がお前を斬るだけだ」

ドクンッ
「斬れるのかい？あんた達に俺が」

「俺は斬れるよ、なんだってな！！」

「剣が！」

「鈍はもう食い飽きた」

「総悟ォォ！！」

ヒュンッ

「おい、相手間違ってねぇか？」

「オメーさんの相手は俺だろうよ」

「おいぃぃ！！相手間違ってんのはテメーだろ！誰の顔面にうんこ叩きつけてんだてめーは！！」
「間違ってねぇよ。吸い込まれるように、まるでマイホームかのようにお前の顔面に還っていったんだよ」
「誰の顔面が便器だこの野郎！！殺すよアイツ絶対殺すよ！！」
「おい待てトシ！」

「火はまだ消えちゃいねぇよクサナギ」

「ここに！」

「この俺の命の火がぁ！！」

「銀ちゃーん！！」

「ば、馬鹿な！自ら剣を！まさかあの男っ」

「最後の出血大サービスだこの野郎！おれの滾る血…好きなだけ喰らいやがれェ！！」

「馬鹿な！！自らの血をクサナギに！剣を蘇らせるつもりか！？」
「うおあああああああ」
「あの男、命が惜しくは…」
「ククク…」

「つくづくふざけた侍だ。剣でテメーの身を守るどころか、テメーが剣を守る鞘になっちまうなんざぁ…」

「おもしれェ。やっぱりあの旦那おもしれぇ」

「総悟！！！」

「き、貴様何を！？」
「勝負はフェアじゃねーとつまらねぇ。喰いたきゃテメーも喰いな、この俺を喰いつくせんならな」

「ふはははは…、喰ってやるよ！喰い尽くしてやるよ！！！」

「うおおおおおおおおおおおおおおおお」

「ああああああああああああああああ」

「銀さん！！」

「総悟！！」

「「うらああああああああ！！！！！」」

「例え記憶なんて無くなろうが、夫婦の契りは…何千回交わしたﾋﾟｰのただれた記憶は身体からは消えやしねぇ！」
「結局汚ねぇモンしか繋がってねぇ！！」

「バカめ！その短い間合いで立ち合えば敵の懐深くまで潜り込まざるを得ん！覚醒した俺の間合いの中では全ての件は鈍らと成り果てようぞ！！」

「あかん！触れたらあかん！今のあいつに接触したら共食いの餌食や銀時はん！」

「触れたらアカン？アホか。んなもん真剣勝負じゃ当たり前だ」

「馬鹿な！総悟の太刀筋をすべて見切って！？」

「体を取っ替え引っ替えしてるテメーには分からねぇだろうが真剣は一度切られたら終いだ。だからってしりこんでちゃ何も出来やしねぇ」

「真剣勝負なんだ、白刃のもと手ぶらで散歩するようなイカれたやつじゃなきゃできやしねーんだよ」

「なぁ沖田くん？いや違ったか――」

「あいつの太刀筋じゃこんなに見えるわけねーもんな」

「お前、何のために身体乗っ取ったの？」

「貴様ぁ！！」

「てめーが今まで何本刃食ってきたか知らねーが、こっちゃあくぐってきた刃の数が違うんだよ！！」

「せい！せい！せい！」
「おい土方ぁ～」

「焼きそばパン買ってこいよ～」

「総ちゃん！目上の人にはちゃんとした言葉遣いで話しなさい！」
「ごめんなさい姉上」

「せい！せい！せい！」

「おい土方ぁ」

「お焼きになられたソバパン買ってこいよ」
「よく出来ました」

「……いや、あんま変わってねぇよ」