「ハァー…」

「ん？」

「……あぁん？」

「……瑛太ぁ？」

「あ！…春人」

(今、転校っつった！？)

(うん。父さんの転勤、福岡)
(いつ！？)
(2学期終わったら)
(半月ねぇじゃん！どうすんだよ！)
(どうもできないし、引っ越しても連絡くれんでしょ)

(じゃあ毎日連絡すんべ！)

(でもまじかー瑛太転校とかマジかよー。全国大会で敵として再開したら燃えるな！)
(毎年２回戦で負けてるこの部で、全国は無理だって)

(高校行ってからだよ)
(甲子園なんてもっとありえない)
(分かんねーだろ！)
(分かる。すげー分かるし)

(毎日連絡すんべ！)
(ああ、約束すんべ)

『連絡を取っていたのは最初の一ヶ月くらいだった。一旦連絡が途切れると、なんて話しかけたらいいか分からなくなった。学年が上がる頃にはなんのやり取りもなくなった。そんなことはよくあることで、毎日合わなくなればこんなもんだって後で気づいた』

「甲子園の再開にしちゃ、ショボイな」
「だから分かんねぇって言ったろ」

(パシャっ)

「小宮さん、また勝手に撮って…」

「いつか訴えるからね！」

「会長～～。あ、いつものいちごみるく」
「私もう生徒会長じゃないよ」
「それがさ聞いてよ会長」
「だから…」

「写真部廃部だって、勉さんがさ。人数が多い部に部室明け渡せって言ってんの」
「去年の生徒会でもその話上がってたしねー。でも廃部じゃなくて　放送部との合併でしょ？」

「コンクールで賞取れば廃部考え直してくれるって」

(パシャっ)
「だから勝手に！」
「そだ、転校生がいた」
「何、急に？」
「学ランの、眠たそうな男子」

「へぇ、引越しで疲れてたのかもね」

「撮らせてくれてありがとー。じゃね会長」
「いや、消してよね」

「えーと、3学期の登校については以上です。2月になれば自由登校も」
「はぁぁぁ！？廃部ぅ！？？？」

「…すみません、隣が」

「声を抑えてくれ」
「そんなの聞いてない！」
「だからね、今話してるんだよ」

「部員がさ、お前ら3人だけだろ？来年3年だろ？今年新入部員もないだろ？実績もないだろ？潮時だと思うんだよ俺は」
「全然思わない！！」

「清水と山口は思うよな？」
「はぁ」
「まぁ」
「はぁ！？まぁ！？」

「いや、でも仕方ないと思うんだ」
「うん。それに俺たちの写真は趣味でも撮れるし」
「私は違うしぃ！！」

「泉くん、何か質問あるかな？」
「自習室への登校は問題なさそうか？」
「そのほうが俺も気楽だと思う」

「校内は自由に回ってもらって大丈夫です。帰る前に入館証だけ事務所に戻して…」

「じゃあ賞とるから！！」
「いや、実績があればってのはあくまで…」

「3学期中に取ります！！」
「おい小宮さん！」

「あ、こんにちはー」

「待て小宮ぁ！あっ！副校長、こんにちはー」
「渡辺先生、後で職員室へ」

「そろそろ最後にしよう、一打席勝負ってのはどう？」
「勝負ねぇ。そうするべ！」

「球速ぇって！！」

「そういや、こんな奴だったべ。瑛太って」

「逆転ホームラン！」

「ホームラン…だよな」
「いや」
「どう見てもホームランだろ！！」
「いや、どう見ても場外ホームランだって」

「いよっしゃあああああああああああ！！！」

「いやっほー！！」

「見たかー！」
「うわっ！！」

「いてぇ…」
「それ、こっちのセリフ…」
「いてぇけど笑える」
「笑えない…」
「スゲー笑える」
「笑えないって」

「…はっあははは」

「あははははは！」

「明日、絶対に筋肉痛だこれ。明日引越しの荷物下ろさないといけないのに…」
「この機会に鍛え直せ！」
「やだよきついのはもう」

「あのさ」
「ん？」

「俺、告白してくるわ」
「は？」

「音してるから、まだ居るっぽいし」
「話…見えないんだけど」

「あ」

(まぁ、願掛けみたいなもん？)
「さっき言ってた願掛けって…そういうことなのか」