「やめとけってアスタ、お前がユノ兄ぃに勝てるわけないじゃん」

「くらえ！必殺――」
「だってアスタ…」

「とぁああああああああああああああ」
「魔法使えねぇんだから」
「なんも出ねーー！！」

「センスゼロだな。その歳でなんの魔法も使えねぇとか、マジありえねぇ」
「アスタお兄ちゃんおもしろーい！」

「お前らなんだ！年上に向かってその口の利き方はぁ！！」
「うるせぇ」

「この世界は魔法が全てなんだよ、魔法なんて使えて当たり前。使えない奴なんてアスタしか見たことがねぇ」

「し、仕方ない…俺の取って置きを見せてやろう」
「とっておき？」

「うおおおおおおおおおどうだお前らこのスピードで腹筋できまーーい！！」
「だからなんだよ馬鹿」
「あははアスタおもしろーい！！」

「ようこそ受領者諸君！今日からそれぞれの道を歩む君たちへ！誠実と希望と愛を！私はこのグリモワール塔の塔主である」

「この地からは魔法帝は愚か、魔法騎士団でこれといった功績を挙げた者もいない。この中の誰かがいつの日か、魔法帝になる事を願う」

「いやほんとマジで！！！」

「オッホン！それでは、グリモワール授与！」

「これが私のグリモワール！」

「どうだ、俺のほうが大きいぜ！」
「僕のほうが分厚いぞ！」

「よし！これでこの村を出て都会へ行けるぜ！」
「俺は家業を継ぐんだ！」

「俺のグリモワール、これ？」

「僕のなんて…」

「私は魔法のページが少し埋まってから考えよっと」

「僕たちは半年後の魔法騎士団入団試験を受ける」
「合格してみせますよ」

「そうかそうか、期待しておるぞ」

「あのぉ……」

「グリモワールが…来ないんスけどぉ……」

「えー……また来年」
「ええええええええええええ！！！！」

「プッｗ」

「なんじゃそりゃああ！！」
「逆にすげぇ！」
「面白すぎだろーー！！」

「マジかよ…」
「信じらんない…」

「四葉の…クローバー！？？」

「四葉…!?あの伝説の!?」
「初代魔法帝も授かったという…」

「すごい力が秘められた、幸運が紛れ込んだグリモワール！？」

「ひ、貧民ごときが…」
「すげぇ！」

「俺は、魔法帝になる」

「あ……」
「すげええええええええええええ！！！！」

「我が児院の希望の星だーーっ！！」

「ユノお兄ちゃんすごーい！！」
「かっこいい…」

「シスターリリィー！！」
「なんだ？」
「また教会の小坊主か」

「いつか魔法帝になって、あなたを幸せにしまーす！だから！」

「俺と結婚してくださーーい！！」

「ごめんねアスタ、私はみんなのシスターだから」
「うわああああああ」

「まだだああああああ」
「あの…ごめんね？」
「ぬあああああ！！！」

「あきらめーーーん！！！」
「いやあの、だから、あのね？」

「まだまだああああああああ」
「本当にごめんなさい！」

「シスターリリィ！ワンモアーーーー！！」

「しつこーーーーい！！！」

「水創成魔法!愛の正拳突き！！」
「ぐあああああああ！」

「ああっごめんなさいアスタ！思わずグリモワールの魔法を！」

「シスターお見事！」
「容赦ねー」

「こ、これはつい！」

「まだだあああああ」
「きゃああ！」

「何回フラれりゃいいんだよ」

「お前はこの世界じゃなーんも出来やしない！何もかも諦めな！生まれながらの負け犬くん！！」

（そう…だよな…どんだけ努力してもどーにもならないこともあんのかな…ああ、もう…諦め…）

「おい…誰が負け犬だ」

「アスタ、お前は確かに魔法帝にはなれない！絶対に！」

「聞いたか？お友達も無理だって言ってるぜ？」
「魔法帝になるのは俺だからだ！」

「そいつは負け犬じゃねぇ！そいつは――」

「アスタは俺のライバルだ！」

「はぁ？ライバル？魔力さえ無いこいつが？」
「まだ…」

「まだだ！」

「情けねぇとこ見せたなユノ。ちょっと待ってろ…今、こいつを倒す！！」

「グリモ…ワール…？」

「やっぱりな！アスタが選ばれないなんて、ありえねぇ！」

「お前の…魔法！？確かにお前に魔力はなかった！何なんだそのグリモワールは！？」

《クローバーの三枚の葉には、それぞれ誠実・希望・愛が秘められている》

《４枚目の端には幸運が宿る》

《５枚目には――悪魔が住む》