「揃ったか、始めよう合宿という名の実験を」

（どうしよう、なんだか雪村くんにくっつきたくなってきた。いざスキンシップを禁止するとあの密着していた感覚が恋しくなって…）

「それにしてもよくこの大きなものが飛びますよね。そもそもなんで飛んでるんでしたっけ」

「確か沖縄の海の青さはサンゴや貝殻の石灰質の砂が白いため…でしたか？」

「白っぽい色の方が青色を重ねるときれいな色になりますからね」

「初めてですよこんなゴージャスなホテルに泊まるの」
「あのしょぼい合宿費でよくこんな宿取れたっすね」
「それなんですけどね、実は山本君が差額を出してくれたんです」
「はい、皆様にいいところに泊まってほしくて」
「結構な額したんじゃ…」

「大丈夫ですよ、明日の経済的希望がなくなったりもやしと小麦粉で生きるのは慣れてますから」

（金ないのに出すなよ！）

「私のなけなしの貯蓄が消し飛ぶことで素敵な宿が取れ、夜のムードが高まり面白いものが見られるなら投資ですよこれは」

「気をつけたほうがいいわよこの漫画家は本当に漫画のためなら手段を選ばないから。」

「砂浜でも人形遊びとは新しいな」
「藍香は人形じゃないっすよ！」

「ごめんなさい遅くなっちゃって。氷室先輩、ほら早く」

「雪村くんどこか変？」
「いや、別に」

（直視できん！これが水着というものか。
なんというか普段より氷室が2.34倍ほど美しい）

山本「男性陣の水着も素敵ですよ」

（確かに水着姿の雪村くんなんて新鮮。）

棘田「雪村あんた白すぎ。レフ板みたいよ。男は前が平面だから余計それっぽくて」

「引きこもって研究ばっかしてるからね～～～」

「あんたが原点に立って虚軸方向を向いてるとして２プラス３ｉの地点がスイカよ」

「どういうこと？」

「虎輔くん、複素数平面だよ」
「覚えてないの？複素数。ほんとに？理系として恥ずかしくないわけ？」

「実はスイカ割り初めてなんですがうまくできますかねぇ」
「スイカの場所は３プラス７ｉですよ」

「そういえば氷室先輩と雪村先輩は？」
「向こうの岩陰に行くのを見たわよ」

「ここなら人目もないな」
「やりましょう密着実験」

（やっと雪村くんとくっつける。それは嬉しいんだけど冷静に考えるとこの格好で密着するの？
やばくない？）

（待て待て待て。この氷室と密着するのか？水着だぞ。この露出度だぞ）

「くっつきたいけど今は恥ずかしいしどうすればいいのよもう」

「どうやってくっつけばいいというのだあの2.34倍美しい氷室に！」

「どう密着すべきか考えましょう」

「とんでもないことに気づいてしまったわ。昔よく胸の大きい子と抱き合った時に相手と若干の距離を感じたのよ。胸が大きいと体を合わせた時に隙間ができて密着面積が減るのよ」
「っていうことはあれか、貧乳と抱き合うほうが密着度はあがるってことか」
「違うわ。理論上最も密着度が高くなるのは男同士が抱き合った場合ってことよ」

「ちょうどよく野郎が二人いるしね」
「てめぇそれやりたいだけじゃねえか」

『えなちゃんに悪いことするやつからは絶対僕が守ってあげる。
僕は愛に生きる男だからね』

『うん、ありがとね虎輔』

『えなちゃん大好き!!』

「そういって虎輔は海におしっこ漏らしたっけ。懐かしいわね」
「やめろ～～～～。俺はそんな黒歴史知らねぇ～～～～」

「覚えているのよ女はね、右脳左脳の連携が強いから感情が動いた体験はなかなか忘れないの。

あ、トイレ行くなら帰りにイカ焼き買ってきて～～～」

「ぜってぇ絡まれてると見せかけた罠だわ。前に雪村先輩も言ってたじゃねーか」

（つまり今はガチで絡まれてる状態かただ平和に話している状態か不明ってことだな。
観測すりゃどっちなのかはっきりするわけだ。
俺の予想では…パケモンドゥの話で盛り上がってただけとかどーせそんなオチが…）

「いや～不本意ではあるんですけどねこれでもオレは愛に生きる男なんで悪いんすけどこのちび女に手出すんじゃねぇよ」
「虎輔、別に私なにもされてない…」

「そうだよパクドゥで遊んでただけだっつーの」

「ざけんなシュレディンガー！！勘違いした、すいませんでしたーーーー！！」

「いえ、こちらこそ。ゆういちくん、すぐ女の子の腕掴むから…」
「そーそー、しゃーねーよ。ゆういちくんだし」

「……このちび女に手出すんじゃねぇよ。かっこいいわ、超かっこいい。」
「うるせー！」
「昔言ってたとおりちゃんと私のこと守ってくれたんだ」
「だまれ～～忘れろ～～～」

「無理よ忘れない。感情が動いた体験記憶は絶対に忘れないの。
こんなの忘れない。絶対に忘れられない。ありがとね虎輔。守ってくれて。」

「うるせー」

「ありがとね…おかしい…」