「お母さんが、次のテスト集中しなさい、って！だからさ、先に楓だけでやっててよ！私もすぐ追いつくからさ。じゃとにかくやってみてね！それ絶対絶対面白いから！」
「ちょっと理沙！？も～…」

「まず名前か～。本名そのままっていうのもあれだしどうしようかな…」

「動き回るのはあまり得意じゃないからな～。それに居たいのは嫌だから攻撃とか受けたくないし。やっぱり杖で魔法使いかな。ん？攻撃力は引くけど防御力は№1、か。防御力を上げればダメージって無くなるの！？よし、これに決めた！」

「ステータスポイントか。これは防御力に全部、と…」

「わ～！今VRMMOってこんな風になってるんだ！」

「遅っ！そうか、アジリティ（素早さ）が0だから早く動けないんだ。アレ、これやっちゃった！？どうしよう、理沙も居ないしログアウトしてやり直そうか…。————よし！せっかく設定したんだし一回モンスターと戦ってみよう！」

「何してんだフレデリカ？」
「クロム。今ね、初心者の子がいたからレベル上げしやすい場所教えてた」
「ふーん。ここもだんだん人が増えてきたな。さ、俺たちも行くか。ペインはもう来てるぜ」

「あ！あれだきっと！モンスターさん！どこからでもかかってきていいよ！」

「お、痛くない！？痛くない！さすがバイタリティ128！どうだうさぎさん、私の腹筋は！あはは！ちっとも痛くないよ！ほらどうしたの、おいでおいで！こっちだって！ファイト～！」

「ん？バイタリティが2倍？ってことはバイタリティ256？うさぎさんと遊んでただけなのにな～」

「うさぎさぁぁぁん！」
《レベルが2に上がりました》
「うさぎさぁぁぁぁぁああん！！倒す気なんてなかったのに！」

「ん？ステータスに割り振れるポイントが増えてる？でも今更防御力意外に振ってもな～。よし決めた。防具余力に振ろう。痛いのは嫌だしね」

「またかわいい子だと戦いたくないから今度は可愛くないのが良いけど…」

「うっそぉ！！…ん？痛くない！あはは、くすぐったいよ！…あちっ！毒の攻撃は防げないんだ！」

「そうか、攻撃を受けていると体制が手に入るんだ！もうだめ～！」

「やったー！やっぱりこうしてれば毒に強くなっていくんだ！」

「やったー！強敵だったけどついに倒したよ！恐ろしい相手だった…！でも綿足の知恵と勇気の前に邪悪なモンスターは滅び去ったのだったー！」

「レアアイテム？バイタリティが+6でつけてるとHPが回復していくんだ。それからステータスポイントが15もらえたからこれも全部バイタリティに入れて――。ってことはさっきの絶対防御と併せて4倍！？はぁ～…」

「何やってんだ？アレ…」

「——使用すると120秒で最大HPの1パーセントを回復？効果時間は10分…」

「取得条件は攻撃を受けつつ…攻撃を受けつつ！？」

「うわわわわわっ！いやいやいやぁ！うわぁぁぁっ！」

「焦ったけど新しいスキルが手に入ったからまぁいいか。ステータスポイントが10入ったからこれもバイタリティに入れて」

「初日にしてはまあまあってとこかな、うん。今日はここまでにしよう！」

「理沙が来ないなら私一人で楽しんじゃうもんね！…みんなおしゃれだな～。私は初期装備のままだし…。あ、あの人も大盾使いだ！あの！すいません、あの！」
「ん？——っ！」

「あの～！そういう格好いい盾はどこで手に入れればいいんですか？」
「これ？」
「その盾、格好良いですよね！」
「あぁ…それはどうも。これはオーダーメイドだよ。生産職の人にお金を払って作ってもらうんだ」
「なるほど」
「紹介してあげようか？」
「お願いします！」

「大盾装備の新入りを見つけてな」

「この子が格好いい大盾が欲しいっていうから顔見せだけでもさせとおこうと思ってな」
「なるほどね。私は見ての通り生産職でその中でも鍛冶を得意としているわ。調合とかもできるけどね」
「私はメイプルって言います！」
「メイプルちゃんね。大盾を選んだのはなんで頭？」
「痛いのは嫌だったので防御力を上げようと思ったんです」
「じゃバイタリティ特価装備がよさそうね。最低でも100万ゴールドくらいはいるけど」

「まぁ気づいたときには貯まっているものよ」
「うぅ～…（しばらくおしゃれはお預けだな…）」

「東に毒竜の迷宮があるわ。そこならお宝がい～っぱいあるわよ！ちょっとモンスターが強いけどね」
「そのうち行くってみるといい。運が良ければ何か装備が手に入るかもしれないぞ」
「分かりました。ありがとうございます」

「ついでに俺のポーションを分けてやるよ。同じ大盾使いのよしみだ」

「…まさか一人でダンジョンに行ったりしないわよねあの子？」
「まさかだろ」

「いよいよダンジョン探索～！私もようやく冒険に出るって感じだね！毒竜の迷宮なんだから毒のあるドラゴンがいるのかな？まぁポーションも持ってるし毒耐性あるからイケるよね～」

「かくなる上は！くらえ！え～い！」

「そろそろボスキャラが出るはず…」

「うわぁ～～！」

「それなら！このタイミングで！もう一回！これを繰り返していけば…。まだまだ足りない！ポーションが無くなるのと、どっちが先か！」

「やったぁ！」

「もうそっちの攻撃は聞かないよ毒竜さん！あ、でも私も攻撃できないんだよね。どうしよ…。えぇい！こうだっ！ふんっ！ふん！」

「駄目だ！全然効かない～！…うにゃ～～～～っ！」

「やったー、私の勝ち！」

「毒竜喰らいは毒竜の魔法を全部使えるスキルか。ってことは初めてのまともな攻撃スキルだ！しかも毒だなんて相性ピッタリ！相手に当てちゃえばこっちは耐えてればいいんだから」

「壊れてもそのたび強力になって元に戻る。しかも唯一無二！てことはこれを持ってるのは私だけなんだ！もう最高！格好いい！」

「私これからも防御に特化してプレイしよう！痛いのは嫌だし」

「やっぱ面白いでしょ！？」
「まだ2日目だからそんなに強くなってないけど。早く理沙も一緒にやろうよ！」
「もうちょっと待ってて、実力テストが終わったら私もログインできるから。楓もちゃんと勉強やっといてよ。今度は楓がログイン禁止にならないように！」
「確かに！」

「あ～あ、楽しそうだな」

《大盾を選んだ理由は攻撃を受けていたいのは嫌だから防御力を上げたかったとの事。極振りか隠しスキル持ちかは聞かなかった》