「まぁ…合格」

「安倍さん、ヤヒコとモジャにも。おかげさまで気配察知がうまくできるようになりました。三日間特訓に付き合ってくれてありがとうございます」

「なんかいた」

「あの…話ってなんですか」
「詫びがしたいんだと」

「恐ろしい思いをさせてしまったね。まずは奴の粗暴を詫びるよ、すまなかった。
…ところで芦屋くん、博打は好きかい？」

「立法さん、なんですかこの箱」

「一つはハズレの空箱だ。もう一方はあたりの入った箱さ。
実は今行政と賭けをしていてね。芦屋くんが当たりを引いたら条件付きで隠世の出入りを許可するってさ」

「出禁解かれるんですか？」

「行政に何した？」

「だって、なにかして当然の権利さ。私の配下にある物怪庵の奉公人に手を出されて私がおとなしくしているわけがないだろう」

（立法さんには申し訳ないけど出禁解除になってまた行政さんに目をつけられるくらいならオレは出禁のままで良い。それに…安倍さんに累が及ぶかもしれない。
下手に刺激しないほうが良い）

「おい、ポンコツ。当てろ。ハズレ引いたら合格は取り消しだ」

「ちゃんと聞いてたんよ。賭けは立法の勝ち」

「条件ってなんですか？」

「オレが芦屋花繪に同行する時のみ出入りを許可するってのなんよ」

「オレはもう隠世に入れる気はない。って言ってたと賭けの結果報告ついでに行政に伝えておいてくれ」

立法「せっかく当たりをひいたのになぁ。それが主の意向なら仕方ないね」

司法「芦屋くんも隠世に入るの抵抗あるんよね？…わかった。…それでも隠世に来る決心したときにはオレんとこおいで」

（オレが招かれざる客だということは変わらない。それでもいつか踏み入る方を選ぶ時が来るかもしれない）

「その時が来たらよろしくおねがいします」

司法「気は済んだんか？」
「全然だよ」

司法「内輪もめはこれでおしまい」

「いくら温厚な性格の私でも今回の件は許さないよ」
「温厚…ね。もしそうならオレがおまんらの間に入らんで済んだ」

「禅子、あれは幽霊か？」

（お父さんには髪と服しか見えてなかったんだ）

「あの透け方…もじゃの見え方と一緒だった。あれは幽霊じゃなくて妖怪だと思う」

「やっと見つけてもらったんけ。物怪庵、わしを人間にしてけ～～～」

「これはいつものことけ、水をつければくっつくけ。
あたしの名はケシ」

「物怪庵主、安倍と申します」

「あれはいつだったか、たまたまあった妖怪から妖怪の願いを叶えてくれる店があると聞いたけ。けしは叶えてほしいことがあって西へ東へと探したけ。でもいくら探しても見つからず。
人間にも見えるように人の服やかつらをかぶって騒ぎを起こして物怪庵にケシを見つけてもらおうとしてたけ」

「この幽霊騒ぎ去年から続いてたそうですけど全てこの子の仕業らしいですよ」

「ケシ殿、叶えてほしいこととは？」
「一日だけ人間の姿になって盆踊りの輪に入って一緒に踊りたいけ」

「人間に驚かれないくらいけしを人間っぽく変装させてほしいけ」