あ～～～ん

「うま～～い！」

「ゆきうさぎバイトは？」
「今日はお休み。桃矢は怪人に入ってるけど」

「イーｯ！」

「働き者やなぁ～」
「自分の学費は自分で何とかしたいって」

「あと、できるだけさくらちゃんが進学とか、したい事あったら助けたいからって」
「ホンマええ兄ちゃんやな～」

「口悪いけど」

「ま、筋金入りのシスコンだからね」

「「ごちそうさまでした！」」

「久しぶりだな。ケルベロス、ユエ」

「ああ、そっちが返事してくれへんかったからな」
「そうだね」
「むっちゃ怒ってんねんやからなこれでも！！」

「ちゃんと分かっているよ」

「特にユエの顔を見れば」

「魔法陣の画像をよこしてワイらを呼んだってことは…」
「話をする気はあるということか」
「ああ」

「ならすべて説明しろ。我が主に何が起こっているのか」

「一番恐れていたことが…現実になる」

「！」

「二人きりだと緊張してしまうね」

「す、すみません…」
「いや、こちらこそ」

「少しお喋りに付き合ってもらえるかな？」
「俺でよければ」
「ありがとう」

「さくらちゃんは…学校ではどうかな？」
「元気です。いつも笑ってて、いつも楽しそうで。それを見ているだけでみんなが幸せになるような」
「そうか…」

「さくらちゃんの母親もそんな子だった」

『――お祖父様様！お祖父様！』

『ほら、虹！』

「いつも笑顔で、楽しそうで…。みんなあの子を見ているだけで幸せになった」

「ただ、さくらちゃんのように運動神経は良くなかったけどね」

『撫子！』

『大丈夫か！？』
『うん』

『ほら、お花つぶさなかった』

「優しい子だった…」

「けれどその優しい子を私は悲しませてしまった」

「意地を張って、あの子が一番幸せになるべき時に祝ってやれなかったんだ。謝れないままあの子は逝ってしまって…」

「けれどさくらちゃんに会えた」

「さくらちゃんを通じてあの子にもう一度会えたような気がしたよ。長く歩み寄れなかった、あの子の愛した人とも話せる機会ができた」

「…何も分かってない者が口を出すべきではないと思いますが、お孫さんも喜んでいらっしゃると思います」

「だと、良いが」

「きっと」

「撫子といいさくらちゃんといい、可愛い子を攫っていくのはなぜもっと憎らしい奴じゃないんだろうな…」

「すみません、なんと…？」

「世の中はままならん、と言ったんだよ」

「ここ…」

「分かる」

「お母さんの部屋だったんだ」

「”レリーズ”」

「”この場の過去の記憶を映し出せ”」

「”レコード！”」

「お母さん…」

『これ以上は駄目』
「！？」

『これ以上は――』

『戻れなくなる』

「あ！」

「こんにちは！」
「やぁ、こんにちは。今日は突然すまなかったね」
「いいえ。明日から海外にお出かでお忙しいのに、大丈夫ですか？」
「どうしても渡しておきたいものがあってね」
「私に？」

「その前に紹介してくれるかな？」

「あっ、そうだ」

「李小狼くんです！私と同じ中学に通っていて、同じ学年で、クラスはとなりで、私の…」

「私の……」

「李小狼です。お招きありがとうございます」

「李くんだね」

「今日は突然予定を変えさせてしまって済まないね」
「お気になさらず」

「出かける予定だったと聞いていたが…」
「はい。なので」
「？」

「おお！」

「さくらちゃんが？」
「はい！」
「これは美味しそうだ。けれど二人で食べる予定だったんじゃないかな？」
「みんなで食べたほうが美味しいですから！」

「これも、よかったら」

「おお…！こっちもすごいね」

「小狼くんお料理上手なんです！」
「いや、そんなことは」
「あるよ！」

「いや、そっちのオカズの方がうまそうだし」
「そんなことない！そっちのお菓子の方が美味しいよ！」

「いやそっちだ！」
「そっちだよ！」
「はははは」

「どちらも美味しいということだな」