ドドドドド
「好キデスッ！好キデスッ！好キデ～～～～スッ！」

びょい～ん

「うわぁ！！？」
「CD初回で1万枚買いましたッ」

「コルァ――ッ！」
「お前は入場禁止のはずだぞ！！」
「俺さん！俺さんっ！」

「俺俺俺―――――！！！！」

「これが握手会…すごいぜアイアドル…」

「あ？」

「どうしたの？何？ヨーグルト？」
「うん、なんか…」

（練乳かな）

《満を辞して発売された魔法少女ファーストシングル「ぶっちゃけ少女じゃない」。これが1億枚を売り上げるモンスターヒットとなり、CD特典・握手会イベントの日を迎えていた》

「列こちらで～す」

「ひゃあああ……」

「…」

きゃ～～！！
きゃ～～～～～！！

フッ

（何これ…何！？）

（え…？人！人多くない？！）

「すっごい盛況ぶりだねー！」
「大盛況っていうか、もうこれ何人位いるんですか？」
「なんか話では、隣町まで列続いてるらしいけど」
「隣町…」

「まさか夢の国まで！？」

「いやー！まさかここまで売れるとは僕も驚きっていうか！CDにはランダムで全150種のブロマイド！さらに3%の確率で握手会応募券～！」

「(有料)」

「えげつない売り方が効いたのかな～っ」
「うわぁ…まじでエゲツねぇ…」
「消費者庁に睨まれるでしょそれ」

「っ……」

「！」

「何しとんねんそないな体で！！」

「行かせて…これを届けなければ！！」

「――今話した通りや。さよちんの身体はボロボロなんやで！？」

「そうね…。限界かもね」
「ああ！ようやったで！」
「私はこの戦いのあと、魔法少女をやめて自分の星に帰らなければならない！」

「いや、そんな設定あらへん」

「東の空に宵の明星が輝く頃！」
「それ逆や」

「そんな些細なことは気にしないで！」

「宵の明星が輝く頃、一つの光が宇宙へ飛んでゆく！それが私なの！！さよならココロ…！」

「待てぇ！さより行くな！」
「さきと会場がピンチなの！行かせて！」

ドスッ！！
「ごはぁっ！」

「っ…」

「さよちん…お前最後まで戦士やなぁ…！」

「次の人どうぞー」
「来て頂いてありがとうございます！」

（そうだ。例えどんな人でも大事なファンには変わりない…）

「ヤッホーさき～！テヘペロ☆」

「あらテレビで見るより格好いいじゃない？あらやだ～っ」

「オカンやないかい！！！」

「そんなに喜んでくれたら来た甲斐あったわ～～」

「いや朝の元気ない下り何だったのぉ！？」

スっ

「嘘でしょ大はしゃぎじゃん！授業参観気分かよ！！」

「そうだ、差し入れあるんだけど…」

「プレゼントの手渡しは禁止ですので！入口にある箱に入れてください！」
「あらそうなのね。ごめんなさい」

「あら！？桃拾くんも一緒なのね！」

「お久しぶり～！桃拾く～～ん！」
「ちょっと！」

「桃拾～！も～ひ～ろ～～～っ！！」
「やめて！やーめーてーよー！！」

「ーーという事は会場内に妖魔の親玉がいる可能性も高いということね？」
「どうしてそれを！？」

「あのー、そろそろ時間…」

「フッ」
ぺしぃっ

「長年培われてきた母さんの魔法少女経験値、なめんじゃないわよ？」
「時間ですんで！！」

「それは…」

「つまりお婆ちゃんの知恵袋的な？」
「小突き回すわよあんた！」

「ただひとつだけ、お母さん忠告しとくわ。ここに犯人が居るということは、この大勢の人たちの前に妖魔が現れるということよ」

「大丈夫だよ！今までどおり私が何とかするから！」

「？」

「そうね…。じゃあ、帰るわね」

ドッ!!!
「「「うわぁぁぁぁ！！！」」」

「！」

グイッ

にゃ～～

「え！？」

「ウチの子に、手出ししないでもらおうか？」

さき～～

「いやぁ、ただの通りすがりの魔法熟女だよ」

「お母さんだよね？」
「いや、私は通りすがりの…」

「おかあさんでしょ！？」

（なんで変身してるの！？）
（いや、さっきその物影でちょちょっと）
（危ないでしょ！！もう若人じゃないんだから！！）
（だってほら、娘のピンチだったし）

「それに親ってのは、子供の応援がしたくて仕方ないのよ？」

「ありがとう…助かりました」

「よし！」