「神奈川県宮ケSAY湖から発生した巨大生物・通称チヂラが上陸し、北東に移動。相模OH野にて頂上的破壊光線を拡散。街を壊滅させる」

「巨大生物は北東への移動を継続。政府は東京上陸を阻止すべく、多摩川を最終防衛戦とし巨大生物に対し多数の砲撃を加え、結果南多摩付近にて活動を停止させる」

「攻撃により回収された巨大生物の肉片データです。体液の中に人のDNA情報が確認されました」

「人のDNA？」
「人のDNA情報は解析済みです。偶然にも一人の日本人と一致しました」

「杉並のアニメーションスタジオで制作デスクを担当しています」

「彼をすぐに呼びたまえ。過去の病歴から巨大生物に有効なウイルスを特定できるかもしれない」
「いえ、それは不可能です」
「なぜだ？」

「3日前から行方不明です」

「宮ケSAY湖駐車場に千葉氏が乗り捨てたと思われる会社の車を発見しました」
「遺留品は？」

「オンエア直前の原画上がりの数カット。あとはメモ書き」

「意味不明ですね」

「遺留品の原画を見せてくれ」

「酷いな…」
「これで金を取るのか」
「やれやれ。ジャパニメーションの裏側見たりだな」

「彼はその上がりに絶望して宮ケSAY湖に身を投げ、湖の謎の生物と奇跡の遺伝子合流果たしたということか」
「いえ。身を投げた訳では無いようです」

「こちらを」

「彼は歩きながら某スマホゲームをしていたようです」

「3日前から宮ケSAY湖付近で珍しいモンスターが採取できたとSNSで話題になってました」

「なので彼は原画回収後、この地に寄り不幸にあったのかと」

『あああああ～～～～っ』
ドボーン！

「うむ。もっと早くに歩きスマホ禁止の看板を出しておくべきだったな」

「私たちにお任せ下さい」
「君たちは！？」

ベリッ

「いつもは街の牛乳配達。その実態はアニメ納品の請負！」

「聞いたことがあるぞ！納品スケジュールギリギリのアニメスタジオに現れて、一本だけ作って天文学的な金額を請求する組織があると！」

「滅相もございません。我々は番組制作費としての適切な金額を請求しているに過ぎません」

「で、君たちは何をしに来た？」

「あのチヂラを、完全行動停止させる手段を提案させていただきます」

「結論を言う。チヂラの最終目的地はここだ」

「杉並！？」
「よりにもよって何故！？」
「普通都心を襲うよな？」
「巨大生物ってランドマーク的建物壊すのが好きなんじゃないの？！」
「千葉氏の原画回収の維持、もしくは帰巣本能がそうさせるのかと」

「自分が所属していたスタジオに戻ってくるというわけか」

「ある意味社畜…アニメ制作進行の鑑だな」

「まぁこっちに来ないなら不幸中の幸い…」
「それマスコミの前で言ったら首飛ぶぞ」
「そんなドジしませんよ」

「杉並が襲撃されてしまうと日本のアニメ産業はほぼストップします。かなりの打撃ですよ」

「杉並以外にもアニメを作るスタジオはいくらでもあるだろう？」

「日本のアニメは100パーセント社内で作られることはほぼありません。各制作会社とも外注に頼っているのが現状です」

「杉並には多数のアニメ関連会社、作画・仕上げだけでなく撮影編集その他大勢の部署が揃っています。隣の練馬と合わせれ70パーセント以上とも…。それが相模OH野と同じことになれば我が国のアニメ産業は…！」

「どうなる？」

「終わり、かと」

「あのアニメの続きが見られない！？」
「声優の声が聞けなくなるだと！？」
「ふざけんなぁ！」
「やっと制作決定になったってのに～」
「解約するかなー」

「例の場所から非公式だが連絡が入った」

「”杉並を守れ。アニメの制作を止めるな”」
「なんだと…！？」

「アニメーターは紙と鉛筆でなんとかなるが…」
「今から避難させれば明日からのテレビのオンエアは全て落ちます！」
「他のセクションはPCがないと不可能です！」

「どうしたらいいんだ…！」

「ああああ…橋が壊される！！」

「橋を越えてそのまま進めば…」
「アニメ業界は全滅」
「その前にかの国からの一斉攻撃が！」

『作戦を開始せよ』
『ラジャー』

「！！」

「まさか…あれは！！」

「行くよ、さき！」

「うん」

「「はあああああああああああああああッ！！！」」

ニャ～～～～～～

「「やったぁ！！」」

「オーマイガッ！」
「何このオチ」
「もう時間ねぇし」
「そろそろお開きだ」
「おしまい！！」