「はぁーあ…」
（かっこ悪）

「そんなに痛いの？」
「いや…今日はただでさえいい事無かったのに怪我までしちゃって…最悪な夏休みだなと思ってさ…」

（全く…宿題の日記になんて書けばいいんだろう）

「はい」

「え？あ…汚れちゃうよ？」
「いいからいいから」
「ありがとう」

「気持ち良いー」

「…さっき、助けてくれようとしてたんでしょ？」
「え？」

「ありがとね」

「西片も来なよ。冷たくて気持ち良いよ？」
「あ、いや…」
「いいからいいから！」

「涼しいね！」

「あ、うん…」

「私は今日、いい夏休みだよ」

「誰かさんに会えたからね」

「…だれ…」
「明日、お土産渡すね！」

「てやっ！」
「わっ！やめてよ高木さん！冷たいって！」

（あれ？あの後ろ姿は…）

（高木さんだ！もう帰ってきたのか）

（よし。こっそり後をつけてやろう！なにか弱点を見つけられるかもしれないぞ…）

「！！！」

（いま、こっちを見た気が…いや気のせい？）

（気づかれていたか！しかし、帽子が見ているぞ高木さん）

（俺を脅かそうとしているな？ならば先手必勝！一言日記に書いてやる！）

「わっ！！」

「わあっ！」
「うわああああああああ！！」

「あははは」
（や、やられた…！）

「どこ行くの？」
「いや、スーパーにおつかいに…」
「へぇ、奇遇だね！私もなんだよ」

「一緒に行こうよ、二人乗りで」

「だから二人乗りはダメだって」
「ちぇっ」
（いつ尾行に気づかれたんだ…）
「じゃあいっしょに歩こうよ」

ジジジッ
「わぁっ！」

ヨロッ
「！」

（あぶないっ高木さん！！）

ぴたっ

「うわあああああああっ」
「！」

「大丈夫！？」

（やはり今日は最悪だ…）

「はい」
「ありがとー」

「！！」

「はぁ～～っ！おいしい～」

「西片はジュース飲まないの？」

「う、うん。俺はいいや…」

（自分の買う金がないなんて言えない！）

「飲む？」

「いや…大丈夫…」

（どうせまた間接キスとか言ってからかうつもりだろ！）
「やせ我慢しないで飲めば？」
「本当にいいんだって」

（我慢だ…ここは我慢…）
ガシャンッ

「ほら。熱中症になっちゃうよ」

「え、いいの…？」
「うん。だって」

「西片、間接キスで恥ずかしがりすぎなんだもん」

「べっ、別にそんなことないから！」

「本当かな？」
「ほ、本当だよ！暑いなー…」

「いただきます」

「しばらく下校とかないんだね」

「まぁそりゃ夏休みだからね」
「そうだ。明日からは昼までここで二人乗りの練習しようよ」
「え？いいけど…道路ではやらないよ？」
「うん。ここで乗るだけでいいよ」

「ここで乗るなら練習しても意味なくない？」
「ううん。あるよ」

「だって明日から夏休みだもん！」

「よかった晴れた～！って何を喜んでるんだ俺は…」

「西片」

「来てたんだ」
「だって約束したじゃないか…」
「まぁね」

「どうかした？」

「あ、いや、別に…」

「わ～。水溜りだらけ！」

「昨日の夜大雨だったもんね」
（一瞬誰かと思った…そういえば休日にたまたま会った事は何度かあるけど、待ち合わせたのは初めて…）

（これはまさかデートとかいうものでは！？）

（いやいや、そいういうのじゃない！ただ二人乗りの練習をするだけさ！！）

「西片」

「なっ何！？」

「話聞いてた？」
「ご、ごめん…何？」

「これじゃあ二人乗り無理だね」

「私、昼からそのまま遊びに行く予定だったからさ。帰るの面倒だし、昼まで時間潰すの付き合ってよ」

（こ、これはデート！？いやいやいや！）

「い、いいけど…あんまり人のいるところはパスね…」
（同級生に見られたら何言われるか…）

「じゃあ…」

「そうだ！」

「できなかったらジュース奢ってね」

（見てろよ高木さんめ！二人乗りくらい！）

「んー？」
「いや今のは無しで！」

（今度こそ！）

「ジュースだね」
「待って待って！」
（こんなに難しいのか二人乗りって！？）

「高木さん…わざとバランス崩したりしてないよね！？」
「してないよ」
「本当に？」
「普通に座ってるだけだよ。できないのは全部西片のせいだよ。だって」

「前に乗っけてもらった時は、その人スイスイ漕いでたもん」

「へー…すごいね。友達の女子…？」
「ううん。女子じゃないよ」

「もう一回！もうちょっとなんだ！」

「次こそ！！」

（くそ！なんだかモヤモヤするぞ！なんだこれ！？）

「なんかムキになってる？」

「なってないよ！ジュース奢りたくないだけ！」

（そうさ、ジュースを奢りたくないだけ！）

「わー、進んだ！」

「…あのね西片、私が最後に二人乗りしたのって、お父さんだよ」

「へっ！？」
「4歳の時だったかなー」

「うわぁっ！」
がしゃーんっ！