「ハァ…ハァ…」

（なんでよ…なんで思った通りに当たらないの！？）

（やっぱり…私なんて…）

『シルヴァ家の末っ子は魔力の操作すら思うようにできないらしいですぞ』
『まさか王家にそのような者が生まれようとはな』

『なんだその薄っぺらいグリモワールは！？本当に王族かお前？』

『魔力のコントロールもできないなんて、本当に情けないわね。これが妹だなんて嫌になるわ！』

『お前のような恥さらし、我らが銀翼の大鷲団には必要ない。なぜお前でなく母上が死ななければならなかったのか…』

『この出来損ないが』

（出来損ないなんかじゃない！絶対に認めさせてやるんだから！）

「やぁっ！！」

「あいつもなんか大変そうだな…」

「あらあら」
「わーお！」
「ふしゅー…」

「魔力が暴走してる」
「なんつー魔力量だ！放っといたらやべーぞ！」

「魔法で攻撃しちまうとあいつがタダじゃ済まんなぁ…」

「お前の空間魔法でアイツだけ取り出せない？」
「無茶言わないでください！あれじゃ近づけないですよ！」
「そっか。魔力を無効化できるやつとか居ればな」
「あ～～れ～～～」

「ちょうどいいところに飛んできたな」
「え？」

「ちょっとアレ、どうにかしてこい」
「どうにか！？分かりましたァ！…て、あんなところまでどうやって？俺飛べないですし…」

「ごちゃごちゃ言うな！」
「ひぃっ」

「今ここで限界を超えろぉぉぉ！！」
「ぬああああああああ」

「うおおおおおおおおお！！！！」

「あ…」

「ああああああ！！！！」

（死んだーー）

「ぼええええええっ！！」

「っしゃあ！生きてたー！」

「あっはっはっはっは！」
「面白かった～！ね！ね！？」
「もう濡れちゃったじゃない～」

「空間あざーす！」
「どういたしまして」

「よくやった！小僧！」
「あざっす！」

「おうし！じゃあ行くぞ！」
「うぃっす！」
「特別にこのオレ様が黒の暴牛の激渋アジトを案内してやるぜ！」

「ついてこいチビスタ！」
「はい！グラサン先輩！」
「ボケ！マグナ大先輩だ！」
「ボケマグナ大先輩！」
「ボケはいらん！！」

「ここが食堂だぁ！」
「うおおおお！」

「どうだ！？無駄に広いだろ！」
「はい広いっす！」

「ここが大浴場！」
「おおおお」

「ううっ熱い！」
「黒の暴牛ならこの程度の熱さなんてことないぜ！なんだ！？もう出るのか！？」
「いえ！まだだ…まだまだァ！！」

「こっから向こうは女共の部屋だ！男が入ったらトラップ魔法で死ぬぞ！」
「えぇぇ！」

「そしてここがトイレだ！」

「殺す」
「すいませんしたー！！！」

「うおおお！」
「猛獣の部屋だ！」
「なんで！？」
「ヤミさんの趣味だ！」

「アスタ…」
「はい！」

ポンッ

「いきもの係をお前に譲ろう！」
「えっ！？」
「大変名誉な仕事だ！本当は譲りたくないが譲ってやろう！」

「餌は朝晩2回だ～。さぁ、やってみろ～」
「は、はい！よしよ～し、さぁ食べな～」

「あ」

「ぎゃああああああああ」
「だーはははは！！！」

「ここが図書館！」
「はい！」

「ここがお遊戯室だ！楽しく遊べるぜ！」
「えぇ！？」

「だーはははは！わーははわーはー！ほーら！追いついてみやがれぇ！」
「うおおおおまてぇ！負けませんよぉ！」

「黒の暴牛団のローブ…てことは」
「おいアスタ！お前の同期だ！今年のもうひとりの入団者！」

「え、同期！？素敵な響き！」

「うーっす！俺ハージ村のアスタ！一緒に頑張ろうぜ！」

「気安く話しかけないで。マナもロクに感じられない下民の小虫が」

「小虫ぃ！？」

「下民！？」

「私はノエル・シルヴァ。この国の王族よ」

「ええええええ！！おっおおおお」

「王族ぅぅぅぅ！？？？」

「おい！お前ーー」

『ーーこの出来損ない』
（また…馬鹿にされる…）

「お前…」

「なんちゅー魔力持ってんだよ！！スッゲーな！！」

「…え？」
「俺魔力ないから羨ましいぞチクショー！」

「特訓して強くなれば無敵だな！ノエル！」

「あ…小虫……アスタ」

「なんだぁ、魔力がコントロールできなかっただけかよ！早く言えよ、出来損ない王族！」
「…」

「俺たちは出来損ない集団黒の某牛だぞ？てめぇの欠点の一つや二つ、どうってこたぁないんだよバカタレ！」

「とにかく！無事で良かったね～！ところでおいしいパスタの店があるんだけど～今度いっしょにどう？」
「その前にとりあえずこれ食べてみ！？な！？」
「すごかったわね！私魔力のコントロールだけは超得意だから教えてあげるわよ！あと大人の女のテクニックとか！」
「妹のマリーがどれほど天使か教えてやろう」
「ふしゅー」

「ほいよ！」

「一緒に頑張ろうぜ！」

「宜しく…お願いします！」