「続きまして、遠月茶寮料理學園校歌斉唱を行います」

「校歌、そんなのあったんだな。なぁ田所…」

「日出ずる国の～～懐に～」

「遠月学園、ここ～にあり～」

「司さん、ちゃんと守ってよね。あの約束。」

「時は来た。」

「今ここに月響祭の開催を宣言する」

「今から実家で作ってた料理を作ってみようと思っててさ。
よかったら味見頼むわ」

「な、どうしてわたしがそんなことを」

「一時間だけだぞ幸平。えりなさまはお忙しいんだ」

（緋沙子が強く止めてくれない）

「私もいいわよ」

「さんきゅー」

「万能ねぎは切っておいたぞ。手伝うのはここまでだからな」
「ああ、さんきゅー」

（緋沙子、やはり最近幸平くんと親し気な感じが）

「緋沙子」
「はい。」
「…いえ、やっぱりなんでもないわ」

「幸平流麻婆豆腐定食！おあがりよ！」

「やっぱ試作あるのみだな。まずは辛みを徹底的に研究してそっから勝てるメニューを見つける。」

「あのね役に立つかもと思って中華のレシピとか持ってきたんだ」

「あれ？田所も極星寮のみんなと出店しようって一色先輩に誘われてたよな？」

「うん、それと郷土料理研究会でも模擬店だすんだけど両方とも断ってきたから」

「うえ？なんで？」

「え、だってそーまくん人手が足りないと思って。」

「…はっ！あのあの確かに足手まといになるかもしれないよね私」

「でも私実家の旅館で時々接客の手伝いもしてたしスタジールでもちょっと勉強したから少しは役に立てるような気がしないでもないというか。だからそーまくんの模擬店の手助けを、もしよければなんだけど…」

「田所…」

「マジ助かるわ！」

「うん！」

「よし、いいもん作ろうぜ田所」
「おー！」

「アツアツのフージャオピン、フージャオピンはいかがですか！」

「ん？フージャオピン？」
「知ってるーーー台湾の屋台で有名よね」

「うわーなにこれ石窯のなかにぎっしり張り付いてる。どんな味なんだろ」

「あらびき豚バラ肉に黒コショウをきかせた肉だねが中に入ってるんです」
「へー食べてみたい」

「私も。二つ頂戴」

「ありがとうございます！」
「毎度あり！」

「「熱！」」
「いただきます！」

「あむ…！」
（アツアツの肉汁が！）

（生地はサクサクのパリパリ。パイ生地みたい）

（中の肉だねに刻みネギたっぷり、黒コショウがぴりっときいて
豚ひき肉のまろやかなコクとうまみが湧き出てくるー）

（（おいしいーーーーーー））

「良かったー。そーまくん、喜んでくれてるよ」
「おう」

「どう？」

「まだたりねぇなぁ、中華研で食べた辛みはこんなもんじゃなかった」

「うっひょ、辛っ。」

「けどまだだ。足りねぇ。まだだ、まだ。辛～～～～。負けるか。辛～～。」

「できたぞ田所、麻婆豆腐辛み激増版。」

「味見頼むわ」
（すでに唇が腫れてる！）

「ひーーーーー」

「ひゃ、ひゃらい」
「え？とんでもねー辛さだよな」

「じゃ、次。ほかの中華メニューも試していくぞ」

「回鍋肉」

「チンジャオロース」

「ああ、ああ・…」
「すまん田所。ちょっと休んでていいからよ」

「ううん、ちゃんと味見しなきゃ」

「ひ、ひーーー」

「食べた、私食べれたよそーまくん」

「ああ、わかっちゃいたけど全然ダメだな。
なんつーか、ただ辛いだけ」
「…！」

「中華研の麻婆豆腐には辛さの向こうに練り上げられた確かなうまみがあった」